過日、入試広報部からの要請で雑誌社からロングインタビューを受けた。今後1年間、入試広報活動に有効に活用するための物である。このゲラ刷りが出来たので一足早く転載する。このような自らお金を投じた記事は何回も繰り返して発信することでコストに見合う。私の論評発信において気を付けていることは①自分の言葉で正直に本音で話すこと②後で読んで分かり易い文章になるように話すこと③選択する語彙や言い回しなどについて熟慮すること④発信先の対象とタイミングを常に考えておく⑤そして一旦話した後の原稿の修正はしないことくらいかな。
―“理事長ロングインタビュー”― 「常に進化と挑戦を止めない、伝統と革新の浪速」
高校の授業料無償化など教育環境の変化が進んでいます。私立・公立それぞれのあり方についてさまざまな議論がなされていますが、理事長はどのようにお考えでしょうか。
確かに、授業料無償化の話が進むと、公立と私立の役割についてさまざまな意見が聞かれます。しかし、大切なのは、与えられた資金をどのように活用し、教育の質を向上させるかということ。私は、資金を内部留保にとどめるのではなく、教育環境の整備と教育の内容そのものにすべて還元するべきだと考えています。たとえば、本校では早い段階から「1人1台のChromebook」を導入し、全校生徒がタブレットを持つ環境を整えました。コロナ禍以前から取り組んでいたからこそ、オンライン授業への移行もスムーズに行えたのです。社会の変化を読みながら、教育の質を高めていく。それが、私たちの大切にしている姿勢です。また、今年は新たに中学校棟が完成し、学びの環境がさらに充実します。このように本校では、教育のサステナビリティ(持続可能性)とダイバーシティ(多様性)を重視し、絶えず進化し続ける学校づくりを行っています。だからこそ、私たちも挑戦する姿勢を持ち、教育環境を日々更新し続けているのです。
また、授業料無償化の影響によって、学校の二極化も顕著になっています。現在、大阪府内には約140校の公立高校と約100校の私立高校がありますが、そのうち公私とも約半数が定員割れを起こしています。つまり、無償化の恩恵を受けながらも、学校ごとの成長に大きな差が生まれている。この状況の中で私たちが目指すのは、「あそこで学びたい!」「めっちゃ楽しい学校!」「Good School」と思われる学校づくりです。そういった意味で、授業料無償化は私たち浪速学院にとって大きなエネルギーとなりました。いただいた支援を最大限に活用し、教育環境を改善し、教育の中身を進化させる。この姿勢こそが、私たちの学校運営の根幹にあります。
新たな改革として、令和6年9月より学校週5日制も導入されました。
おかげさまで、大きな反響をいただいています。これまで私立の強みのひとつとして「土曜日も授業がある」ことが挙げられていましたが、私たちはさらに進化するために、大きな変革に踏み切りました。土曜の授業4コマを平日に振り分けることで、週5日制を実現。その代わりに1コマの授業時間を50分から45分に短縮しました。
では、土曜の時間をどうするのか―そこで生まれたのが「3S(Saturday Something Special)」という新たな取り組みです。その一環として、生徒自身が興味のある分野を選び、学びを深める選択制の特別講座「1S(Own Selection)」を設けました。たとえば、大手塾の講師による英語講座や、大手銀行の専門家によるマネー講座など昨年度は130の多彩なプログラムを用意し、外部の教育機関や企業と連携して「その道のエキスパート」から直接話を聞ける機会を提供しています。さらに、自学自習を希望する生徒には、「2S(Self Study)」として、質問対応可能な先生が常駐する自習教室を開放しています。
生徒自身が、自分にとって何が必要なのかを考え、選択する機会と環境が整っているのですね。
おっしゃる通りです。 うれしいことに、校内で実施したアンケート「2024年 生徒による自己分析と授業評価」の結果によると、「学校生活が楽しい」と答える生徒の割合は全学年で85%を超えています。また、将来の進路についても、学年が上がるにつれ「考えていない」「全く考えていない」と答える生徒の割合が大幅に減少しました。学校生活を通じて、自分の将来について考える生徒が増えていることを実感しています。それは何より、「学校が楽しいから」。楽しいからこそ、将来について考える。さらに、土曜日には新たな出会いや学びがあり、それが将来へとつながっていく。こうした環境が、生徒たちの成長を後押ししているのだと思います。
私たちは以前から「Good School」を掲げ、学校運営に取り組んできました。しかし、教育に一つの正解があるわけではなく、時代の変化も常に進んでいきます。だからこそ、社会や世界の動向を意識しながら、常に「今日より明日、明日より明後日、来年、5年後…」と未来を見据え、変革を続けることが大切。それこそが、「常若」の精神です。そして、生徒たちにもこの精神を身につけてほしいと考えています。常に若々しく、前へと進む逞しさを持ちつつ、人への優しさを忘れない。そんな生徒を育てることが、私たちの目指す教育です。
これだけ教育環境が整っていると、入学希望者もますます増えていくのではないでしょうか。
よくぞ聞いてくださいました。 今年の高校入学者数は1152人。クラス数も昨年の22から25に増加しました。特に注目すべきは、専願入学者が1021人に達したこと。これは非常にうれしいですね。中学の入学者も141人から168人に増え、クラスも5クラスに拡大。これにより、全校生徒は中高合わせて81クラス、3385人の大規模校となります。新しく完成した中学校棟には、86インチの大型モニターを設置し、廊下には自学自習ができるサロンを配置。開放感を重視し、仕切りを最小限に抑えました。さらに、ダイバーシティ推進の一環として1階にはジェンダーフリートイレを導入し、女子用パンツスタイルの制服も2年前から採用しています。時代の変化に合わせた新たな挑戦を続けています。
また、卒業生のつながりも強化しています。同窓会組織を「浪速学院校友会」として法人化し、卒業生はもちろん、保護者や祖父母など学院を応援してくださる方々のネットワークを広げています。8年続く「二十歳の集い」もその取り組みの一つ。就職活動や大学院進学を見控える20歳の節目に母校へ戻ることで、原点を見つめ直し、旧友との再会が刺激となる場を提供しています。
浪速学院はこれからも、未来を見据え、新たな価値を生み出していきます。ここで育まれたつながりが、生徒一人ひとりにとって一生の財産となることを願っています。