2025年6月2日月曜日

6月度 白妙の一斉参拝

 6月1日は日曜日だったから、今日が「一斉参拝」の日となった。例年この6月の参拝は楽しみにしている。運よく晴天の中で生徒の衣替えした「白シャツ」が目に眩しく、辺りは清浄感に包まれた爽やかな「白妙の一斉参拝」に感じるのである。6月の一斉参拝の時の学院長講話は何時も持統天皇御製の「新古今集」にある「春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の衣(ころも)ほすてふ 天(あま)の香具山(かぐやま)」を生徒に伝える。しかし私は万葉集の方がどちらかというと好きで、「春過ぎて 夏きたるらし 白妙の衣ほしたり 天の香具山」、断定的で力強く、まさに万葉風である。まぁ、どちらも良いが・・・。 


「大化の改新」の時代に生きられた持統天皇は大化元年(645年)のご生誕、40代天武天皇の皇后で、後継天皇となるべき草壁皇子が、若くして亡くなられ、自ら41代持統天皇となり皇室史上3人目の女性天皇となった。私は「壬申の乱」から藤原京まで歴史に燦然とその名を遺す持統天皇の話を詳しく語った。こういう語りに生徒は目を輝かせて聞く。31文字の和歌、17文字の俳句など日本という国の表現力の多様さを話し、「白妙の衣ほすてふ」と歌うだけで季節感を感じ、日本人が持つ精神性と豊かな詩情の素晴らしさを生徒に伝えた。その後、当然、学校生活のマナーやルールなどの話に展開するのは当然の流れである。 


特に今日は今社会問題となっている「オンラインカジノ」「闇バイト」「大麻、覚せい剤等の危険薬物」「SNSと人権問題」に集中して話した。すべてスマホが絡んでいる。これらは極めて便利なものだがその裏腹に「危険が潜んでいる」ことを生徒に伝えねばならない。生徒も悪いことだと知ってはいるのだが「ノリ」で行ってしまう。このノリや勢いが怖いのである。これらは学校の内規による処罰でだけで済むものではなくて捜査権を有する警察が前面に出てくるだけに重大な法令違反に問われ、最悪本校に通学出来ない可能性が出てくる。私はこの辺の処を静かにそして時に熱く語った。中央館ホールの代表生徒も教室の生徒もじっくりと聞いてくれたと思う。 

今日の一斉参拝は時間をかけて「駄目なことは駄目」と言い、終わったが、何か重い責任感を感じる。眼前の総勢3380人という膨大な数の将来性ある発展途上の若者に語る機会を有している充実感は何事にも代え難いものがあるが、同時にこれらの生徒に絶対にやってはいけないことを教えるという学校の教員の重い責任感にも思いを致す。すべからく「捜査権の無い学校」だけでやっていけるものでもなく、基本的に「家庭での教育」も今更ながら重要であるとの認識を新たにした。調査と捜査は違うし学校の調査には限界がある。 

従って31日の土曜日のPTA総会で私とPTA会長は時間を取って保護者に伝えたのである。今までも我々はこのような事を繰り返してきたが、今後とも継続して行かなければならない。一回言って済むほど簡単なテーマではない。尚学校は絶対に「隠蔽」などはしない。どちらかと言うと私の姿勢はテーマによっては直ぐに監督官庁の大阪府私学課や、時に所轄の警察署には直ぐに報告をする方であり、その方が生徒や社会の公器としての学校を護るための、大きな責任だとの確固たる考えがあるからである。