2019年10月4日金曜日

月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也・・・浪曲公演


「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」、有名な松尾芭蕉の記した「奥の細道」冒頭の一文だ。元禄23月~9月にかけて芭蕉46歳の時の作品である。現代的に訳せば、確かに月日は永遠に旅を続ける旅人であり、来ては去り、去っては来る年もまた同じように旅人である。同じように人生も旅である。奥の細道はこの後「老をむかふる物は、日々旅にして 、旅を栖とす」と続く。私もこの学校にて長い、長い旅をして来た。浪速は私の棲み家である。長い旅のおりおりに、多くの人々に助けられて今の私が有る。

 

平成19年4月に理事長・校長に就任した。その翌年の19年9月22日にそれまでの「芸術鑑賞会を芸術・芸能鑑賞会」と名称を改めて「浪曲大会」を演目とした。今日的生徒に果たして浪曲が受け入れられるのかと言った命題の実験である。学校行事に日本の古典芸能である「浪曲大会」を企画する学校など当時どこにも無かったし、それは今でもそうではないか。しかし浪曲家、三原佐知子師匠による口演は大成功で多くの生徒は初めて聞く浪曲に感動し、涙する者も居た。着任間近で学校改革全てに肩に力の入っていた12年前を思い出すと今気恥ずかしいが、この時に出演してくれた三原佐知子師匠には感謝、感謝である。

 
 


あれから13年、三原佐知子師匠は大きな病気をされたが、今見事にカムバックして活動を再開され始めたと言う。「受けたご恩に報いる」ことは人間として当たり前のことである。私はPTA会長に相談して「令和元年度記念PTA特別企画・・・秋の夜に浪曲を楽しむ」企画をお願いした。言い換えれば三原師匠カムバック記念である。日時は令和元年11月30日(土)17時開演で場所は本校中央館視聴覚教室である。会場は申し分ない階段教室で演芸場も意識した場所であり、ボーズのスピーカーも付いている。「曲師」は師匠の相三味線を務めておられる卓越した三味線演奏家の虹友美師匠、本校の津軽三味線のクラブ指導者でもある。

 
 


現在担当管理職が細部を詰めて呉れているが出し物は佐知子師匠一八番の「母恋あいや節」に決まったという。NHK浪曲特選などにも出された素晴らしい母と子の愛情をたっぷりと聞かせる名曲である。この演目は平成19年9月の時にも口演されたものである。当時のブログを読みかえしてみると写真と共にお若い師匠が目の前に迫り涙が滲む。先生には「私の人生」と称して行きかふ年も旅人として語って頂きたいと思う。今回は生徒ではなくて保護者対象の浪曲公演である。恐らく保護者は涙するであろう。