「先生、これは駄目な奴だけど、どういう訳かテニスの指導だけは上手いんですよ!」と言われたことが今でも忘れられない。ここでいう駄目とは親の我が子に対する謙遜の言葉だ。今から10年前のことだった。何があったか詳しくは聞かなったが公立中学校の教員を辞めて本校で働きたいと言って来た30代の教員の父上の言葉だった。このお方は校長先生まで務められた立派な教育者である。とにかく学校改革を推し進める為に「新たな血」を入れたくて経歴と面談結果の良さで直ぐ私はこの教員を採用した。そして2か月後には専任教諭だ。今なら有り得ないような事をした。
この教員は市内のトップクラスの進学校である有名な私立高校から大阪教育大・大学院まで進んだ社会科の教員である。学歴はその人物のポテンシャルを図る大きな目安になる。私の信条だ。所謂「頭の良さ」は大きなアドバンテージなのである。勿論、頭だけではないことは言われないでも分かっている。例の「あおり運転」で騒がれている男を見れば分かる話だ。話を戻そう。この教員は年が変わった新年度の中学校教務部長に抜擢した。採用して数カ月後の抜擢だ。この人事に「ぬるま湯にどっぷり」と浸かっていた仕事をしない、小雀どもが陰で批判しているような話は聞いたが完全無視である。
そして10年の歳月が経った。私はこの教員をこの4月に中学校教頭に発令した。冒頭のテニスであるが数日前のアラウンドにて書いたようにここ数年で飛躍的にテニス部は強くなった。特に中学校テニス部は男子、女子とも全国優勝や、準優勝校にまで育て上げてくれた。このD教頭先生は過日大阪中高連会長から「大阪私立学校優秀クラブ指導者表彰」を受けた。私は今朝の拡大朝会で金一封をお渡しし、10年の足跡を慰労し共に喜んだのである。勿論テニスばかりではない。今の浪速中学校の「教務の形」を作り、特筆すべきは「道徳教育」の日本の現場実践リーダーにまでなってくれたことだ。ゼロからの出発程しんどいことはない。それをやってくれた。今や浪速中学校の道徳教育は全国区である。とにかく誠実で、真面目な、真面目過ぎるお人柄だ。