2020年8月29日土曜日

弁慶の立ち往生


遂に安倍総理が退陣を自らの声で国民の前で表明された。「極めて残念」である。昨夕5時から1時間かけてお話しされた。私はテレビの前で一言一句聞き漏らさないように耳を傾けた。8年強の歴代最長の期間を一国のトップとして責任を見事に果たされた。本当に「お疲れ様でした」と申し上げたい。私は歴史に残る名宰相であると確信している。「戦後レジームからの脱却」を見事になされたと思う。野党や一部マスコミ、それに訳の分からないようなコメンテーターなどが散々こき下ろし批判してきたが、このような総理は居なかった。完全無欠の人間などいない。どうして人は簡単に人を批判するのだろう?私は無念のお気持ちが分かる。退陣表明のお話を聞きながら総理と同じく少し目頭が熱くなった。

 

しかし、後1年任期いっぱい、何とか成らなかったのだろうか?言っても詮無いが後1年、例え「病に伏すとも」やって頂きたかったと思う別の自分がいる。「弁慶のように国民の前に仁王立ち」し、例え最後が「立ち往生」となっても総理が残された業績はいささかも揺るぎはしない。国民は病と闘いながら国民を守る、この総理の姿に求心力を取り戻し、圧倒的に総理を応援したのではないだろうか。恐らく総理周辺や側近は同じような事を叫んで引き留めたのだろうが、最後は安倍総理が決断したのだと思う。この点が武蔵坊弁慶と違う。ある新聞は総理に欠けるものは「国民の前に仁王立ちする姿勢と発信力」だと書いていたが頷く部分はある。

 

教育関係者として安倍総理の最大の功績は「教育基本法の改正」を成し遂げたことである。基本法はその名のとおり、日本の教育に関する根本的・基礎的な法律であり、教育に関するさまざまな法令の運用や解釈の基準となる性格を持つことから「教育憲法」と呼ばれることもある。2006年(平成18年)12月22日に公布・施行された現行の教育基本法は、1947年(昭和22年)公布・施行の教育基本法の全部を改正したものである。実に60年ぶりに安倍総理は改正してくださった。その前文が素晴らしい。「たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願う」とした上で、「この理想を実現するために教育を推進する」としている。教育こそ国の根幹だと教育憲法は謳っているのである。



特に私立学校の部分では旧法では全くなかったが、新基本法には第8条に新設し、「 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす 重要な役割にかんがみ、国及び 地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない」と書いて下さった。この条文のお陰で日本の私立学校は国、都道府県行政から助成金や補助金が回り、公立学校とは違った自主性が担保されているのである。我々、私学関係者は第8条の新設に深く、深く安部総理に感謝申し上げなければならない。私立大学や私立高校が簡単に潰れないのはこの条文があるからである。潰したら行政が「コテンパン」に叩かれるからだ。

とにかく私はこの学校の弁慶となる。正門に仁王立ちし、敵の侵入をさえぎり、内なる敵を追い出す。そして最後「矢折れ刀尽きる」とも「立ち往生」し、この学校を守るのだ。安倍総理はこの事を教えてくれた。死ぬ前日に退陣表明し、後継者を指名して私は終える。