「度し難い」とはこういう事を言うのであろうか。元々仏教から来る言葉だが、今では「程度の悪さ」を表現している時にも使われている。読み方は「どしがたい」だが、どうしようもない、救いようがない、といった意味合いの表現だ。私は通算16年間校長をしているがこのような教員は初めてだった。まことに以て度し難い。常勤講師として4月1日に着任して4月16日に突然辞めるときた。本校は4月15日が給与支給日で、振り込んだ翌日に電話だ。それも直接本人ではなくて代行会社を通じてだった。人事担当の副校長が血相を変えて私の部屋に飛び込んで来た。そして、その後退職届が送られてきた。
全ての教科の授業担当教諭が決まり、「さあ、やるぞ!」と順調に滑り出した時に大切な教科の教員が一人抜けた。とにかく授業に穴を空ける訳には行かないからあらゆる手段でコストもかけながら教員を手配した。新しい教員が決まるまで、今いる教員の応援もお願いしてだ。当方から契約書に記載されている住所を訪問するも「応答はなく雲隠れ」である。そうしていたら「未払い分の部活動指導手当てを振り込め]と手紙が来た。これにはさすがの私も許せなくなった。「まあ、若いのだから、中にはこういうのも居るわな」と思っていたが、私は下記のような手紙を弁護士と相談し、内容証明で送付した。
そうすると、驚くなかれ、早速振り込みがあった。世間知らずの勝手し放題、我儘が今まで通って来たのだろうが、そう行かない。大の大人が契約書を交わすと言うことは、大変な事で契約書違反は看過出来るものではない。損害賠償請求が出来る話だ。今日の職員会議で私はこの事例に触れて常勤講師の先生方に気を付けて欲しいとお願いした。再度契約書を読み返して欲しいのだ。辞めたいと言う気持ちを変えて貰う気は全くない。人それぞれに道はある。ただ事前の通告が必要である。ルールは守って欲しい。
平成31年4月23日
常勤講師 ○○ ○○ 殿
このたび貴殿から郵送された「退職届」及び関連文書一式を受け取り、貴殿の意思を確認いたしました。このような文書が届いたとことに当方は誠にもって驚くばかりであり、また甚だ遺憾であります。
貴殿は合理的な理由を示すことなく労務の提供を明確に拒否されておりますが、上記文書をもって当方は貴殿の退職を認めることはできません。まずもってそのことを通知いたします。
本来であれば、対面して直接話をしたいところでありますが、貴殿が対面を望まず、このたびのような手法で意思表示されたので、当方も封書にて連絡いたします。
本学院の就業規則第11条において、貴殿が依願により退職する場合を定めており、原則として30日前までに「退職願」を提出し、当方の承認を得なければなりません。やむを得ない事由がある場合であっても、14日前までに提出を要します。
また、期日までに退職を願い出たとしても、当方が承認するまで従前の職務に従事し、業務を後任者に引き継がなければなりません。
貴殿は一方的に退職の意思表示をおこなっておりますが、法人と貴殿の間の契約の終了は、4月16日の代行会社からの電話を意思表示と考えても、翌日の4月17日から起算して14日の経過、即ち4月30日の経過を以て生じるものであり、4月30日迄の間は、貴殿との雇用契約は有効であります。
これを踏まえて、貴殿が出勤をおこなっていない行為は、「欠勤」であるということを、あらためて認識してください。
貴殿の行為がもたらした現状において、貴殿の担当授業を代行する■■科の先生方に大きな負担を強いており、何よりも生徒に対しても迷惑をかけていることは、軽率、身勝手極まりない無責任な行為であると言わざるを得ません。
したがって、当方は貴殿に対し、上記欠勤に対する清算として、次の金額を請求いたします。
欠勤期間(4月16日~4月30日)の減給分及び通勤手当額 …請求金額○○○円
請求金額 … 〇〇〇円
上記は、欠勤期間による給与及び通勤手当の日割り精算額であります。算定根拠は別紙を参照ください。上記については、支給日こそ15日ですが、言わば給与1ヵ月分、通勤手当に至っては6ヵ月分の先渡しでありますので、清算を要するものです。
したがって、4月16日以降欠勤している貴殿には、支給額その全てを手にする権利はありません。労務の提供なくして対価を得ることを主張する都合勝手な理屈は通用しません。
上記の請求金額を全て、次に指定する銀行口座へ速やかに振込んでください。
振込期限は4月26日(金)といたします。
*銀行支店名 … XXX銀行 △△支店
預金科目 … 普通預金
口座番号 … No.・・・・・・・
受取口座名 … 学校法人浪速学院 (ガッコウホウジン ナニワガクイン)
上記の請求は、当方が大阪府から認可を受け、税金を財源とする補助金を受けている学校法人として、規定に則った適正な手続きによるものであります。
当方は上記の請求金額の回収を決して諦めません。1円たりとも妥協いたしません。必ず全額回収する決意であります。
万が一、振込期限4月26日(金)までに振込みが無き場合は、顧問弁護士との全面連携体制で、法に基づき厳正に対処いたします。
尚、貴殿が当方と直接対面することを望むならば、いつでも応じます。
以上、本書を確認の上、賢明な判断をなされることを通知いたします。
学校法人浪速学院 理事長・学院長 木村 智彦