2021年6月12日土曜日

国はもっと高等教育に国費を投じよ!

今日は高校3年生対象の「大学説明会」の日である。例年近隣の住吉区民センターを借りて行っていたが、コロナ禍の為に今年は初めて校内で実施した。本校のようにほとんどの生徒が大学に進学する私立高校としては校務分掌の「進路指導部」が主担となって行う極めて重要な学校行事だ。4月に就任した新しい進路指導部長は優秀でホープの一人である。昨年はコロナの為に一回目の非常事態宣言下で中止やむなしとしたが今年は知恵を絞って企画してくれた。参加してくれた大学は約70大学であるが、「対面での説明会」は30大学程度でそれ以外はすべて「オンライン説明会」であった。私は視察して回ったが様相は従来の方式と異なったもので、この光景は少なからず私に感動を与えた。「ニューノーマル」の一つになると感じた。

 

確かに大教室で資料を使って多くの生徒の前で大学関係者が説明するのも味があって悪くはない。近畿大学の対面説明のブースは広い部屋が満杯であった。オンラインでは端末から流れてくる資料と音声は静かに生徒の心に染み入って行く感じもして、見ていても感じが良かった。忙しい大学の先生方がわざわざ車や電車で京都や神戸から来られる必要はない。生徒との直接面談はオープンキャンパス時にこちらから大学に出向く時でも良いかもと思った。このようにオンラインが可能となるのも校舎内は通信環境が完全に整備されており、端末でも学校保有の「クロムブック」を200台近く保有しているからである。今日はそのうちの50台程度に「ズーム」を入れて、例えば京都の大学とオンラインで結び遠距離説明となる。まさにコロナは我々に従来とは異なる様相を見せつけている。

 


約730人の高校3年生を3回に分けて行った。9時10分に始まり、1回あたり30分でこれを3回に分けて行い午前中には全てが終わる。オンラインだから時間もかっちりと予定通り進行するのも良い。特に少人数の場合は自分だけの世界にひたれる。生徒は本当に真剣な顔つきで「自分の大学選び」に没頭していた。しかし私は視察しながら思った。我が生徒達730人が進学する「ポストコロナ時代、大学は本当にこれからどのように変わっていくのであろうか?」という不安、そして国民的課題として「日本の大学への支援」を本格的に考えなければまさに国力の低下を招くとの危機感が強い。「大学全入時代の到来」と言われて久しい。18歳人口の減少にともない、大学の志願者数と入学者数がほぼ同じになるから、大学は生き残りを賭けて自己責任に基づく競争の中に身を置き自己改革をしなければ淘汰されると言われてきたが一向に大学が破綻したというニュースは聴かない。

 





次世代の若者を育てる高等教育への投資は国民的な課題であることは間違いない。大学進学率が長い間50%そこそこで安定的に推移していることも摩訶不思議な事で本校ではほぼ100%の生徒が大学に進学するが全国平均となると半分なのである。それは極端な地域格差の為である。例えば、東京の進学率は現在18歳人口のおよそ70%で50%を超えているのは神奈川・愛知・京都・大阪・広島に限られ、それ以外の地方は概ね40%前後である。この数値はここ30年間で、ほとんど変わっていないところに受験生はファッションのように都心部、大都会の大学に進学したがる傾向はますます強くなっている。大学進学は実は「いびつの典型」なのである。 

日本の親の80%は子供を大学に進学させたいと思っているが、実態は50%程度である。又見過ごすことが出来ないことは、必ずしも中学時代の成績が悪い子が進学しないのではなくて成績が中の上で進学しない生徒が実に20%もいる。学びたいという意欲も学力もあるにもかかわらず、家計の事情によって進学できない高校生は、少なくとも20%の半分の10%はいるとしたら全体の1割になるこうしたグループを放置して、「大学全入の時代」など言っても空虚だ。そうした高校生に対する財政支援がないことを無視したまま「大学全入」という表現を使うのは、結果的に政策課題の隠蔽ではないか。国はもっともっと高等教育に教育費を投じなければならない。