今、学校現場にて決して大きくはないが、小さな問題でもないテーマが地下のマグマのように徐々に膨らみ始めている。それが児童生徒の「性的マイノリティへの対応」かも知れない。現代社会で今や普遍的言語となったLGBTを含む性的マイノリティは世界中におり、当然学校現場にも居ておかしなことではない。LGBTは性的マイノリティを表す言葉の1つであるが、恋愛対象が誰になるかという性的指向と「身体の性と心の性の不一致が起こる性自認」に分かれる。性的指向は女性の同性愛者(レズビアン)、男性の同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシャル)に分かれているが、有名人のカミングアウトやテレビなのでの出演で分かり易いと言える。しかし「性自認」はトランスジェンダーと呼ばれ、多くの場合思春期に認識するから、学校生活で困難に直面する場面が増えてきていると認識すべきである。
今朝の朝刊でも朝日新聞が「スカートで通学 普通のことに」の見出しで生まれた時の性別は男であるが、小さい頃からスカートをはきたかったが我慢し小学校時代はズボンで登校した。しかし中学に入学し、小学校卒業時に「カミングアウト」して「これからはスカートをはいて登校します!」と言い、周辺の配慮でそれが可能となり中学生になって1年、いやな思いをしたことがないという事例紹介記事であった。本校では男子であろうが女子であろうが生徒は自由にスカートでもズボンでもはきたいものを選択できるようにしている。しかし現時点では男子生徒がスカートで、女子生徒がズボンで登校していると生徒がいると私は聞いてはいない。その場面が出た時はしっかりと対応していくだけの話である。ごくごく普通のこととして!
それもこれも本校では「人権教育」に力を入れているからだと私は思っている。人権推進委員会が立派に機能しており、I委員長がその重責を見事に果たしてくれている。今月に入っても6月3日には高校2年生639人に対して「ジェンダー、セクシャリティを巡る人権課題」と題して、あの有名な弁護士でテレビにも良く出演されているトランスジェンダーの「仲岡しゅん」先生をお招きして講演をして貰った。又先週の17日には人推委のI委員長自ら「子どもの命を守る学校の取り組み」と題してDVD[LGBTlsの児童生徒の存在に配慮して]を使っての教職員研修会があった。中身は重かったが、大いに勉強になる内容であった。このような研修会を積み重ね、「受容」の土台が学校文化に育っていれば学校現場における性的マイノリティ課題は「ゆるやかに」乗り越えていける。
教育現場や仕事、結婚、医療、公的サービスでさえ様々な問題が起こっているが、本来であればLGBTなど性的マイノリティであっても差別的な扱いを受けることなく、平等に、かつありのまま生きられる社会が理想である。しかし実際はいじめや差別の問題、通常であれば享受できる権利やサービスを受けられないといった状況が散見されているがそれは認識と風土、言い換えれば「時代の進化と熟成」だと個人的には考えている。「放置」は良くない。しかし一挙に解決するような軽い話でもない。皆で「緩やかに乗り越えて行く」しかない。性的マイノリティ(約8%程度)と性的マジョリティ(約92%程度)の「ノーマル」化の進展には快刀乱麻の魔法の杖は未だ無い。皆が頭に中に意識して少なくとも「何人にも心無い言葉で人を傷つけない」と心に決めて自らの言動に注意するしかない。