去る26日の高校卒業式の余韻がまだ身体中に残っている。当日のアラウンドでも書いているがこの卒業学年の入学を許可したのは当時校長職を兼務していた私だった。平成31年4月4日、平成最後の年の学年で1か月後の5月1日に令和元年の学年になった。「御代替わり」と言う節目の年に入学した生徒達は元年の1年間は恙なく学校生活を送ることが出来たが年が明け2年生、3年生の2年間はコロナにより散々な目にあった。しかし生徒達はめげることなく目標に向かって頑張ってくれた。卒業生代表の答辞に様々な思いが詰まっている。「浪速教育の真髄」が答辞の中に詰まっていると思う。これこそ教育の成果だ。I学年主任先生、担任のK先生、学年団の先生方、有難う、そして管理職の先生方、ご苦労様でした。
私はこれを聞きながら目頭が熱くなった。心の中で今後とも「今を一生懸命に生きよ!」と心の中で声援を送った。式典終了後体育館の出口で生徒を拍手で見送りながら巣立っていった生徒たちの顔を凝視し焼き付けた。学校という場所は実に予測不能な様々なことが出来するが本当に素晴らしいものだ。老いて尚、「学校という社会の公器」に関与できている自分は幸せ者だとつくづくと思う。素晴らしい感動の答辞だった。少し長くなるが全文を紹介致したい。
答 辞
寒さの中、寒椿の美しさが際立ち、冬鳥たちも旅立つ準備を始めた今日、この時、私達七百十名のためにこのように温かな式典を挙行していただき、誠にありがとうございます。また、ご多忙の中にもかかわらず、ご臨席くださいましたご来賓の皆様、そして木村理事長・学院長先生、飯田校長先生を始めとする教職員の方々、ならびに関係者の皆様に、卒業生を代表して心から御礼申し上げます。
平成三十一年四月四日、私達は平成最後の入学式を迎え、晴れて浪速高等学校の生徒となりました。あれから早くも三年の時が経ちました。 一年生、私達は浪速の伝統行事である伊勢修養学舎に参加しました。ご指導の中で「自分の行動に責任を持つこと」の大切さを知り、高校生としての自覚が芽生えました。また、男子は禊を、女子は豊栄の舞を経験し、私たちが何気なく触れていた神道の、奥深さに触れることができました。耐寒行事では、友の意外な一面に驚いたり、長い道を歩きながら将来について語ったりしました。とても楽しかった思い出に残る行事です。この一年生の時代は、青春にふさわしい日々を、何も考えずに送ることができた最後の日々でした。
二年生が始まる少し前、令和二年三月二日、政府から臨時休校の要請が出されました。新型コロナウイルス感染症により、私たちの期待していた輝かしい学生生活が奪われ、耐える日々が始まりました。一学期はほとんどを家で過ごし、新しいクラスの友達にも会えないままに、オンライン授業が始まりました。友達に会えない寂しさや、毎日の不安は尽きず、我慢の日々が続きました。登校できるようになったあとも、様々な行事がなくなり、最も楽しみにしていた修学旅行も中止になりました。やるせない気持ちがつのりました。しかし九月、オンラインという新しい形で、浪速祭が実施されました。このとき私たちは「できた」と思いました。それまでの「できないことを我慢する」ことから、「どうすればできるか」に考えが変わりました。また、先生方が催して下さった修学行事では、クイズ大会、球技大会、クラス行事を通じて、「もっと人と繋がる時間を大事にしたい」と、強く感じました。
この思いを、三年生の「浪速祭」で私たちは活かすことができたと思います。密をさける制限を乗り越え、クラスが団結するという行事の性格はそのままに、動画という、何度も見直せる新しい形にすることができました。受験を控えながらも、全力で取り組んだことで、自分たちの可能性に自信を持つことができました。私たちは、高校生活の中で「当たり前」を失い、我慢することも、不安なことも沢山ありました。しかし、いま世界は変革の時代です。新型コロナウイルス感染症に始まり、災害、気候変動、情報化など、さまざまな「当たり前のなさ」に直面しています。私たちが学んだ、「したいことをどうすればできるか」と積極的に考える力は、これからの「当たり前でない」社会を生きる、必要不可欠な武器になります。この学びを活かし、私たちはそれぞれの未来に向かって進み、目指す夢を叶えたいと思います。
在校生の皆さん、高校の何よりの思い出は「人との繋がり」だと私は思います。様々な制約がありますが「人と繋がる時間を大事に」高校生活を過ごして欲しいと思います。そして何よりも、私たちが無事に学校生活を終えることができたのは、先生方が、親身に支えて下さったからだと思います。日常生活を安心して過ごせるよう、感染対策はもちろんのこと、学業が遅れることがないよう、オンラインの授業に様々な工夫を重ね、私たちに分かりやすい授業を行って下さいました。また、修学旅行に代わる企画を準備して下さったり、浪速祭が実施できるよう掛け合って下さったり、陰日向なく動いて下さいました。温かく、時には厳しく、三年間私たちを導いて下さり、本当にありがとうございました。
そして、いつもすぐ側で支えてくれた家族には、感謝の気持ちでいっぱいです。臨時休校の日も早くに起きて朝食を準備し、「おはよう」と声を掛けてくれました。高校生として自由にさせてくれつつも、何かあるときには声を掛けて、日々困ることがないようにしてくれました。いつもありがとう。これからも私たちを、温かく見守っていて下さい。
最後になりましたが、理事長・学院長先生・校長先生をはじめとする教職員の皆様のご健勝とご多幸を、そして浪速高等学校のさらなる発展を祈念いたしまして、答辞とさせていただきます。
令和四年 一月二十六日
卒業生代表 ●● ●●●