2022年10月27日木曜日

日本古来、伝統的な寄付金の差し出し方の実例

 またまた、100周年寄付金の話で恐縮ですが、私の周りで今、起きている状況を冷厳に観察すると、そこには「時代の流れ」「人間の機微」「個人が生きてきた歴史」「個人の今の生活」等々「人間模様」が明確に写し出されており、人間大好き人間として「小説に書きたい」くらいの喜びと言うか心を揺り動かされます。今回の募金活動で大きな特徴は「募金形態の多様化」を図ったことです。10年前の創立90周年時の時は全ての募金がほぼ「現金持参」の形でありましたが、今回は情報企画部の主導でWEBを使った方式がメインとなりました。本校のホームページの「法人」欄を検索して頂くと「100周年記念事業募金受付中」の画面が出てきます。 


ここには募金趣意書や支払いの方法が書かれており、クレジット、コンビニ、PAY-easy、郵便局振り込み等々様々な形態が示されています。要は寄付してくださる方々の生活スタイルが異なるからその事情に合わせて選択できるようにしたのです。背景にはコロナの事も考慮しました。一々学校に出向く手間を省いたということですね。ところがやはり寄付金を自ら持参して事務室に来られる方も依然として多いのであります。年代層の中にはネット寄付など慣れないし、間違いなく届くだろうかの不安もあるのかも知れません。こういう不安を抱く人々は多いのかも知れません。しかし、私は人様へお祝いのお金を届けるのに宇宙空間を使ってお渡しするなどは日本文化ではありませんと言われる方々もいらっしゃると思っていました。その実例が昨日実際にあったのです。この場面に出くわした私は心が温かく満たされて行くのを感じました。


 
「お父さん、何をぼやぼやしているの!お世話になっている学校に早く持って行きなさい!
」と強く言われたとご主人が言っていたから嘘ではありません、「正装に着替えて、袱紗に入れて持って行くのよ!」とも言われたとの事です。持参して頂いたお方は学校改革以来今日まで本校の仕事をしてくれている「植木職人」のHさんです。この道50年のベテランで本校の校内、校外ほぼ全ての植樹や管理をしてくれており、千早赤阪村の多聞農園のイチゴ園や果樹、農園の管理もお願いしています。日頃は作業着しか見ない私が立派なダークスーツで部屋に入って来た時は「びっくり」しました。彼はやおら「家紋の入った風呂敷に袱紗と塗り物のお盆がありその上に立派な祝いのし袋が乗っており、それを「うやうやしく」私に差し出してくれたのです。


 

「立派な入れ物だね?」と私が聞くと「家内が嫁入り時に持ってきたものです」とお答えになりました。一般的に、結婚前の女性が嫁入り道具として黒留めや喪服などを仕立てる場合は、実家の家紋を入れるのですが、このような祝い盆に家紋入りの風呂敷、袱紗まで持たせるのを初めて知った瞬間でした。「家内の実家は堺の旧家で4人姉妹の長女・・」で言われていました。私はこの「五三の桐」紋は「女紋」かも知れないと思いました。母の紋は祖母の紋、祖母の紋は曾祖母の紋というように、女系で紋が伝わることになります。これらの習慣のある地域は、関西、千葉、瀬戸内海沿岸などで東京・名古屋・九州・東北ではあまり聞かない風習ですが、いずれにしてもHさんの今回のやり方には驚き、感動しました。今、反省することは私は上着を着替えずにジャンパーのまま、寄付金を受け取ったことです。これは私がかいた恥となりました。