2019年5月28日火曜日

「橿原神宮 奉納演奏 その2」


奉納演奏の後、記者団から取材を申し込まれた。あらかじめタクトを振った山本先生と吹奏楽部の部長が代表取材であったが、どうしても私にも話が聞きたいと言うので基本的にメディアには出ないように逃げているのだが橿原神宮庁の広報の方の申し入れもあってお受けすることにした。色々と聞かれたが、基本的には神社神道の学校として御世替り、改元の月である、この五月中にこの機会を得る事が出来、感極まっていると申し上げ、ご関係の皆様のお蔭だとお礼を申し上げた。そしてこれは単に奉納演奏だけの意味ではなくて「過ぎし学校改革12年の全ての集積」であることを強調したが果たして記者さんにはその意味がお分かりただいたかどうか。今朝の新聞記事は産経新聞と地元奈良新聞が結構大きく、それも好意的に書いて頂いていた。

 
 
 


今迄何回も「海道東征」の中身について書いて来たが再度今日のブログで知らしめたいと思う。交声曲(カンタータ)「海道東征」は、昭和15年に皇紀2600年、即ち初代天皇の神武天皇が即位され2600年に当たることを奉祝して、信時潔作曲、北原白秋作詞によって作られた管弦楽、独唱、合唱からなる日本の名曲である。古事記や日本書紀の神話を元に、神武天皇がまだカムヤマトイワレヒコノミコトと呼ばれていた頃、筑紫の日向(美々津)を出発し、宇佐、岡田、吉備、浪速、白肩と、大和を目指して東征する物語が壮大に描かれた演奏時間50分に及ぶ大曲である。

 


戦前はしばしば演奏されていたが、戦後はタブー視されてきたためほとんど演奏されなくなり人々の記憶から失われていた。勿論私も知らなかった。平成26年2月、戦後3回目となる海道東征の上演が熊本で行われ、これを報じた産経新聞記事を読んだ時に私は何か強く感じるものが有った。私は直ぐに行動に移し、苦労して遂にCDを求め、初めて演奏を聴いた時に私は「この海道東征こそ学校法人浪速学院の学院曲として相応しい曲」だと確信した。早速作曲者のご遺族より吹奏楽編曲の許可を戴き、「海道東征浪速」と名称を変え、本校吹奏楽部の独占演奏が出来る学院曲として今日まで学校行事や神社庁の式典などにて演奏させていただいている。






  

編曲は吹奏楽部の外部指導者である大阪音楽大学の萬浪弘和先生にお願いした。お忙しい御身で相当なご苦労もお有りだった、先生は私の希望を聞いて見事な曲に編曲してくれた。心から感謝致している。オリジナルの海道東征も全8章に分かれており、簡単に言えば以下のような構成である。

 第一章 高千穂(たかちほ)

    荘厳な調べで幕を開け、国産みの物語と高千穂の素晴らしさ、大和への東征の決意が歌われる。

 第二章 大和思慕(やまとしぼ)

    東征の目的地である大和への憧れが美しいメロディで描かれる。

 第三章 御船出(みふなで)

    日向の美々津から船団が出航する喜びと、輝かしい前途が表現される。

 第四章 御船謡(みふなうた)

    海の神の鎮めの詩、その後船を漕ぐときの歌謡風の船謡が続く。

 第五章 速吸と兎狭(やはすいとうさ)

  日向を出発して初めて筑紫に上陸するまでの出来事を高らかに謳う。

 第六章 海道回顧(かいどうかいこ)

    吉備から(難波)浪速に向けて出発する前にそれまでの長い旅が回顧される。

 第七章 白肩野津上陸(しらかたのつじょうりく)

    白肩野津へ上陸し大和に入る前、豪族・長髄彦の抵抗に遭う様子が描かれる。

 第八章 天業恢弘(てんぎょうかいこう)

三種の神器を讃え、神武天皇がついに橿原の地で初代天皇として即位する。

国を治める偉業と山河の美しさが感動的に表現される。

私は勝手に言っているのだが「日本国建国の大河物語」なのである。とにかく調べが美しい。勇壮であり、快活であり、楽しく品格に富んでいるまさに「日本人のDNAの調べ」と言っても良い。昨日は第5章を除いてすべての楽章を通しで演奏した。

 


 





昨日の指揮者は主席音楽監督で国語科のY教諭がタクトを振った。見事な指揮ぶりだったと思う。初代、二代目が女性の監督で初めての男性監督である。私は「凛として振れ、ダイナミックに振れ」と言い続けてきた。以前は幾分「なよなよしい」感じだったからであるが昨日は良かった。この楽曲は基本的に「戦いの曲」である。雄々しく、それでいて品格に富み、「前に、前に進む」光景を聞く人に想像して頂けなければならない。80人を超す部員も次第に緊張が解け、素晴らしい演奏になったとその顔に出ていた。私は生徒達を褒め称えた。最初から最後まで私の傍で演奏を聞かれた久保田宮司様は詩の入る交声曲も悪くはないが曲だけの吹奏楽と太鼓の音曲は想像をかきたてられ素晴らしいですねと褒めて頂いた。このようにして用意周到、準備に万全を期して行った改元記念奉祝の行事である橿原神宮への神武天皇一代物語の音曲奉納は無事に終わった。私は今、幸せ感に浸っている。