2019年5月8日水曜日

万葉集と日本人


昨日の「天皇陛下御即位・改元奉祝祭」に引き続いた「御世替り奉祝」の第二弾の企画として今日は「奈良大学の上野誠教授による特別講義」の日とした。上野先生とはもう長いご厚誼を頂いておりこのようにして時々学校に来て頂き生徒に講義をして頂いている。万葉集の研究家として著名な先生はいま引っ張りだこの状態であったが今日も駆けつけて頂いた。このようにして深いお付き合いをしている大学教授を有していることは高校生にとって極めて有意義なことである。本校には上野先生以外にも様々な大学教授とのお付き合いが複数おられ、心強い限りである。高校生にとって時に非日常的な大学教授の話は学校の先生とは一味も二味も違い興味関心となって頭に残るのではないか?

 
 
 


今日は初めての試みということで高校生2200人を相手の講義だから特別な演出を考えた。午前中4コマの授業を済ませ、中央館ホールには200人の生徒、残りの2000人は50教室にも及ぶ各教室でのテレビ放送による講義とした。果たして上手く行くか、心配もあったが結果的に大成功であった。何より先生のお話しぶりが上手くて生徒を飽きさせない。演題は「令和の時代を生きる君たちへ」と先生から指定されており、まさに新元号の御世替りから8日目となった今日に相応しいテーマであったことも生徒の興味関心を惹いたのだと思う。

 
 


今回の新元号の出典が国書であったこと、なかんずく「万葉集」から採られたことは、個人的にも嬉しいことであった。私は和歌ででも俳句でも詩でも小説でも「日本語が大好き人間」である。「古事記」を源流とした神道の世界から生まれた日本の和歌は本当に素晴らしい文学であり、和歌の舞台が九州大宰府の地で、梅見の宴を詠ったことも神社神道の学校としては縁を感じている。全国の神社の内、天神、天満宮の名前の付いたお社は大層喜んでおられるに違いない。勿論本校でも学院神社には紅梅・白梅の木が植えられており、余談ではあるが、何時も梅の実から学院神社製「梅酒」を作るのは私の仕事である。この梅酒は平成29年度調整のものである。まだまだ飲まない。熟成が必要だ。

 


この歌が詠まれたのは天平2年(西暦730年)正月13日、今の暦で2月8日だからまさに梅が満開であっただろう。8世紀初頭の天平という時代は決して良い時代でなく政変と飢饉は人々の生活を苦しめたと文献にはあるが、そのような環境の中で世界に誇る素晴らしい仏像や万葉集が生まれた。万葉集に収められている4500首あまりの和歌は後の時代の起爆剤となって和歌の歴史を作ったのである。奈良時代、万葉集の生まれた「天平の甍」時代は日本人の転換点になったのかも知れない。

 
 

 

万葉集から採られた新元号「令和」の時代は何かとてつもない構造改革と技術革新により「様変わりの時代」になる予感がしてならない。きっと良い時代になると思う。平成の30年は日本の歴史で戦争の無い時代となったが令和の時代は技術革新の大競争の時代かも知れない。少子化や高齢化など決して悲観することはない。財政赤字だなどと殊更大騒ぎする必要はない。隣国との軋轢なども恐るるに足らず。日本人の持つ底力は初代神武天皇陛下以来今上陛下のの126代まで2679年間に亘って纏まり、再生、復活してきた国民である。


今日の上野先生のご講義を聞いた生徒たちの心に「日本及び日本人」についてここで再度考え、自分たちにも同じ血が流れているのだと確認し、自信を持って欲しいのである。それにしても生徒は真剣に講義を聞き、何かを得たような雰囲気の漂う授業であったと思う。何事もタイミングが大切な事を示している。今日の特別講演が数カ月先だったら効果は半減する、しかしそれにしても何か先生とは気が良く合うわ!実に面白いし、素晴らしいお人柄だ。下校する生徒に聞くと全員が「目茶、良かった!」と言ってくれた。この企画は大成功であった。