2020年7月13日月曜日

「ハラスメントに関する法改正」

令和2年6月1日施行で重要な法改正があった。それは「国の施策としてハラスメント対策」が明記されたことである。特に今回は従来、法整備がなされていなかった「パワハラ」についてその防止対策が法制化された。事業主に対する、すなわち学校法人で言えば、この学校の設置者たる私に対して「雇用管理上の措置義務」とこれらを適切に有効に実施するための「指針の根拠規定を整備」しなければならなくなった。従来本校には「セクハラ防止委員会」がありこれはこれで適切に運用されてきたが、社会で今や組織上の「パワーハラスメント」が大きく問題として出て来た背景もありこのような法改正になったのである。ちなみに本校は従業員数、教職員数すなわち労働者数から規定される事業規模から「大企業」並みの扱いである。




 本校は昨年の法改正の時点で従来の「セクシュアルハラスメント委員会」を「ハラスメント防止委員会」と改め準備をしてきたが、今日の校務運営委員会で法改正の趣旨にのっとり、本格的に「ガイドラインの整備」「就業規則と内規」の改正を早急に着手するように指示を出した。コロナ禍の中で今回の法の中味を私を含め役員が十分理解し、勉強したのである。16日の職員会議でもこの動きの説明が要るだろうと思う。パワハラに関して言えば「未然防止が目的」であり、これを怠ると責任を問われ易い。「あなたの職場はどうなっているのですか!」と問い詰められたら返す言葉がない。微妙なケースで「これはパワハラか、そうではない」などを過度に意識する必要はなく、ただ現実的に「申し出に広く対応」することで背景の原因や改善に繋げる目的である。学校というのは高学歴の人々が多く、相対的に「コミニュケーション能力」が高い人が多いから何とかそれぞれが大人の対応をしているが、全体的に「超多忙」だから「ハラスメント問題」については周知や研修も不足しており社会の波に乗りおくれがちな面がある。言われて初めて気づくのである。


又学校というのは教育という目的遂行のため、どちらかというと労使ともに「労働者」としての権利・義務の意識が希薄になりやすい。「流れの中に身を置いている感じ」である。校長や教頭など管理職も教員の世界しか知らず、ついつい閉鎖的になりがちであるところで、特に私学は異動がなく関係性が深くなりがちである。従って学校管理職やベテラン教員からの教員に対するパワハラは存外のところ無く、どちらかと言えば学校では男子教職員から女性教職員、女生徒へのセクハラのケースが良く報道されている。しかし常日頃生徒を相手にしているから得てして「生徒に対しては高圧的」になりがちで生徒側もついつい我慢しがちであるが時に生徒・保護者から「あの先生の一言で学校に行けなくなった!」などの私宛の訴えは実名、匿名含めて結構ある。
このことは学校設置者たる理事長・理事会にも言えることで、ついつい教員や事務職員を「仕事が出来ない、遅い!」「能力がない、勉強しない、努力しない!」「何時も遅く来て、早く帰る、休みが多い!」「裏表があり、さぼりマン!」などと追い詰めることになりかねないが、パワーハラスメントの定義は①優越的な関係を背景として②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により③労働者の就業改善が害されるもので、①か③までの要素が全て満たされて初めてパワーハラスメントと定義された。この場合意図や目的などは要素とされていない。後で「あの先生を育てようとした指導だった」などは通用しない。ただ指針には「客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については職場におけるパワーハラスメントに該当しないとわざわざ明記されている。



いずれにしても法改正にあるように「判断」にあたっては「考慮要素」としてその言動の目的、労働者の過去現在の問題行動、内容程度、経緯や状況、仕事の内容・性質、態様・頻度・継続性、“労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性”など総合的に考慮することが適当としている。個別の事案に対する労働者の行動が問題となる場合も明記されているが、訴えたからと言ってその個人に「不利益な取り扱いの禁止」も規定された。私は上記のような法改正の趣旨にそって本法人のセクハラ、パワハラ、マタハラ、ケアハラ、カスハラなどが無いような職場風土を作るべく努力して参りたいと思う。今ハラスメントといわれるものは34個もあるそうだ。


ところでカスハラとは何かご存知か?「カスタマー・ハラスメント」の意味で顧客等からの著しい迷惑行為のことである。学校で言えば生徒や保護者と言える。いわゆるモンスターペアレンツの言動であろうがこれが案外と教員を疲弊させている事実はある。すなわち教員からのパワハラと生徒・保護者からのカスハラは時に表裏一体となる場合がある。難しく、厳しい世の中になればこそ、今ハラスメントは拡大傾向にあるがこれは社会的に「ダメな行為が変化しつつある」と言うべきである。昔は許されたものが今は「アカン!」となる。価値観が変わって行きつつあるのである。最後に一つ言えることはパワハラ防止は「アンガー・マネージメント」に尽きるという識者の意見がある。「腹を立てた方が負け」ということだが、私も加齢とともに直ぐに腹が立つようになった。自覚し自戒しているが、難しいものだ。優しく、丁寧に言って受け止めてくれるなら、それもするが、本人は何も分かっていないのだから結局コミニュケーションの問題となるのである。時間をかけるしかないのか。難しい問題だ。