2022年7月9日土曜日

追悼 安倍晋三元内閣総理大臣 レガシー「教育改革」

 安倍元総理が亡くなられた。天に向かって「ウオー!」と叫びたいような衝撃的な気持が抑えられない。私などよりも10歳もお若い、まだまだ働き盛りの、未だ67歳、残念でならない。怒り、悲しみ、無常、様々な思いが胸に去来する。この胸の底にある言いようもない重たさは一体何なんだろうか?まだまだ我が国の為には必要な卓越した政治家だった。無念極まりない。この傑出した政治家を私は大変評価していた。この5月、中学校の修学旅行の付き添いで安倍さんの地元の長門のホテルに宿泊する機会を得た時にそのホテルの支配人が私に言ってくれた、「昭恵夫人と昔は良く食事に来られました。お二人は仲睦まじく、さっぱりとしたお方で地元では大変な人気です」が耳に残っている。また昨年の11月には東京のあるパーティで昭恵夫人と同じテーブルに同席する機会があり、夫人は「先生、自民党は大阪では選挙に弱くて・・・」と微笑みながら談笑したことも今鮮明に思いだす。運ばれた病院にご夫人が到着し、1時間後にドクターから死亡が確認されたと報道にあった。安倍晋三さんは一連の小学校設置問題で議会やメディアの攻勢にさらされていた時、妻である昭恵夫人を徹底して庇ったのは夫、男として大変に立派なことであった。この事も印象に深い。 


安倍政権7年8カ月の功績は枚挙にいとまがないが、我々「教育の現場にいる人間」にとって忘れてはならないことは「安倍元総理と教育改革」である。私の勝手な想像であるが、安倍さんはやはり明治維新の立役者となった長州人の気概を殊更意識しておられたと思う。吉田松陰、高杉晋作、伊藤博文ほか今日の日本の源流は今の山口県萩の「松下村塾」にあると思っておられたのではないか。長州人の血潮がたぎる元総理はこれからの日本の為に「明治以来の教育大改革」をやってのけた。文科省内で検討すらできなかったことを実現されたと思う。ここはやはり官僚ではなくて政治家の力である。特筆すべき成果をまず一つ上げよう。安倍政権は2006年、「教育の憲法」とも称される「教育基本法を改正」した。 それまでの教育基本法は、国が国民の教育に責任を負うこと、権力が教育をゆがめないことを掲げるなど、国家への責務を規定するものだったが、改正教育基本法のポイントは自己肯定できる児童・生徒をつくることを大きな目標とし、平成18年秋の臨時国会で可決成立した。新しい教育基本法は前文の中に真理と正義を希求し、公共の精神を尊び豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成をするとともに伝統を継承、新しい文化の創造をめざすと明記した。以上の文言のうち、旧教育基本法にあったのは真理のみで、それ以外は総て加筆された。

教育基本法の改正は、その後大きな力を発揮し、10年ごとに改訂する学習指導要領や学校で使用する教科書検定にも重大な影響を与えた。根拠の不明確な従軍慰安婦問題の記述や日本固有の領土である竹島や尖閣諸島などの記述が是正されて、史実に近いものに徐々に変化していった。いわゆる「自虐史観」からの脱却である。 小泉内閣で教育基本法改正のエンジンとなった安倍晋三代議士が総理に就任した平成18年の臨時国会で教育基本法の全面改正を成立させたのだから極めて手際が良い。この時以来私は安倍晋三と言う政治家に注目した。現在、教育現場では自己肯定力の持てる児童・生徒を育てることが大きな教育目標になっている。真理と正義を追求し、偏狭なナショナリズムを排し、世界の国々と平和・友好をめざし、人類の発展に努める。同時に「日本の伝統と歴史を大切にして公共のためにつくす精神」「独立心の強い誇り高い日本人こそ私たちの目標」である。教育基本法の全面改正が後世に与えた影響は計り知れない。後は、国民への直接的な責任を放棄し、日本の伝統や愛国心を育むことを教育の目標とし、なにより家庭での教育に関する条項を新設するなど、教育の責任が国民に向けられるようになった。 

 



1次政権(20069月~20079月)で教育基本法の改正などを成し遂げた安倍首相は、同法の理念の徹底をはじめ、積み残した課題を速やかに「実行」することを目指し、首相直属の会議体として、第1次政権の「教育再生会議」に「実行」の2文字を加えた「教育再生実行会議」を20131月に設置した。この「実行と言う言葉が安倍さんを表現」している。理念だけを時間をかけて長々と語るのではなくて具体的に行動に移すのが安倍流であり、私もその点では全く同じだ。側近の塾業界出身の下村博文氏を文部科学相兼教育再生担当相に就けたこともあって、同会議をてこに次々と政策を実現していった。その中でも、特に目をひく、いじめ問題、学習指導要綱改訂、教育の機会均等も大きな成果である。いじめ対策としては教育再生実行会議の第1次提言「いじめ問題等への対応について」を受けて、「いじめ防止対策推進法」を成立させた。この法案の成立の意味は大きい。


まだまだ安倍さんの成果はある。「英語教育とプログラミング教育」の導入である。詳述はしないがこれもグローバルな日本に育てるべく立てた目標で今までになかった概念である。2020年の教育改革と呼ばれているものだ。安倍政権の教育改革は、上記のものにとどまらない。「教育の機会均等」を実現するために、新たな奨学金制度を設けた。奨学金をめぐっては、その返済に苦しむ人がいることを踏まえて、全員が対象ではないが、第9次提言(20165月)が提案した「給付型奨学金の創設」や、就職後の所得に応じて奨学金の返還額が決まる「所得連動返還方式」の導入(いずれも2017年度から)は政権の意向を背景にしなければ、文科省内で検討すらできなかったものであった。文部科学大臣の下村氏とのタッグで安倍政権が78カ月で教育界に残した実績は以上のように極めて大きい。

 

決して雄弁ではなく、活舌も今一つである。直截的な物言いから時に国会で物議を醸すこともあったが、尊敬する吉田松陰先生の「至誠の人」であろうと努力され、多くのファンが存在している。政治家の家に生まれ、「男子、志を立てて郷関を出られ」、実行に移した。笑顔が素敵である。G7では国際政治のリーダーとして各国から一目も二目も置かれていた。残念無念である。心からご冥福をお祈りしたい。合掌。