今日は待ちに待った「映画鑑賞会の日」であった。それも「アニメ」とか「お笑い」の映画ではない。「反戦平和教育」の一環として決めたものだ。決めてから足掛け4カ月となった。年末年始、入試業務などがあって今日になったのだが実現の運びになった関係の教員に感謝致したいと思う。これはまず理事長・学院長が「見つけ、まず自分で見て、生徒に見せたい」と判断し、今日の運びになったものである。産経新聞社の小さな記事を読んで直ぐにリメーク版のDVDを購入した。私がまず中身のチェックを行い、教頭にも見て貰った。場所である体育館を映画館にするには、それなりの準備が必要で「パソコン、スクリーン、照明、音声、画像」等総務部長や情報企画部の達人が準備をしてくれた。私の長い勤務経験で初めての試みであった。結果的に良い映画鑑賞会となったと思う。
英語、数学、ばかりではなくてたまにはこのような企画があっても悪くはない。会場に集まった生徒の顔を見ながらそのように感じた。たまには余裕である。高校3年生は大学受験で既に登校はしていないがそれでも高校1年生で870人、2年生で742人だから午前午後の2回に分けて上映した。本校は府内でも大きな体育館だと思っているがコロナなどを考えると分けた方が良いとの判断だった。まず冒頭経緯とロシアによるウクライナの侵略から話を始め、日本においても歴史上の内戦、そして先の世界大戦での敗北と、戦争の不条理、平和の大切さを生徒に語ったのである。映画の中味は敢えて避け生徒に考えて貰う様に配慮した。
映画のタイトルは「樺太1945年夏 氷雪の門」である。これは1974年公開の日本映画で、1945年(昭和20年)8月15日の昭和天皇の玉音放送後も継続された、ソ連軍の樺太侵攻がもたらした、「真岡郵便電信局の女性電話交換手9人の最期(真岡郵便電信局事件)」を描いている。この映画には後日談があって猛烈なソ連からのクレームがあって上映機会が無くなった「幻の名画」と言われている。日本向けのモスクワ放送が、「ソ連国民とソ連軍を中傷し、ソ連に対して非友好的」という論評を流し、タス通信も「ソ連国民とソ連軍を中傷する反ソ映画」と論評し敗戦で弱腰の時の政府が引き下がざるを得なかった歴史的経緯がある。所謂「曰くつき映画」である。
2時間余りのこの映画は「胸が重くなる」感情以上の物を私に与えたほどの内容で名優たちの素晴らしい演技で「戦争のむごたらしさ」「人間の尊厳」などを余すことなく描き切っていた。中味を詳しくは書けないが今日鑑賞した生徒には間違いなく「反戦平和を願う」気持ちが今まで以上に芽生えたのではないか。午前の部が終わった後、主担当のY指導教諭は「こちらが驚くほど生徒は静かで、それだけ見入っていたのだと思います」と報告してくれた。今日は良い仕事をしたと私は思った。