2024年10月4日金曜日

私立高校授業料完全無償化は「パンドラの箱」か?

 「パンドラの箱」を開けたという言葉がある。ギリシャ神話でゼウスがパンドラに持たせた、あらゆる災いの詰まった箱を、彼女が地上に着いたとき好奇心から開けたところ、すべての災いが地上に飛び出し、あらゆる悪・不幸・禍など地上には不幸が広がり、「希望」だけが箱の底に残ったという例の神話だ。比喩としては少し違うかも知れないが、大阪の公立高校の現状はそのような状況に近い。今年度入試において、今の公立の半数が定員割れになった事態を直視するとパンドラの箱を開けたと感じざるを得ない。パンドラの箱が開いたと言うべきか!パンドラの箱とは「私立高校授業料完全無償化施策」である。

 この箱が開いたことによって結果、公立も私立も今揺れ動いている。注視しなければならないのは私立高校も揺れ動いているのである。公立も私立も半数が定員割れだ。公立側の対応策は大阪府教育委員会の諮問機関「府学校教育審議会」が発表したように例年3月10日前後に実施する公立高校の一般入試の日程を、2月下旬に前倒しすることと「特色入試」を盛り込んだ入試制度改革の事で、令和10年度入試から始めると言う。特色入試とは各校が求める人材を選抜できる新システムの導入だというが、何のことか、まだよく分からない。聞くところによると第一志望、第二志望と書かせ、1が駄目だったら2に行けますよと言う事か?


 
公立私立、何処の高校に行っても授業料は「ただ」なのだから、受験生は行きたい高校へ行くだけの話で、入試の日程を早めたからと言ってこれが公立回帰の決め手になるとは思えない。早期に進路を決めたい受験生の選択肢を広げる効果が期待できると書いていたが、2週間程度早めても効果は期待できないのではないか。それに公立の受験生にとって第一志望が落ちたら第2に簡単に鞍替えするとは考え難い。それだったらプライドもあって「私立専願、併願先」に進むのではないか?今春の入試では私立高の「専願」が過去20年で初めて3割を超え、公立高の志願者は現行制度になった16年度以降で最少となっているが、この水の流れの勢いは当面は続くのではないか?

 私は思う。遂に「学校の真価」が本当の意味で問われる時代になった。公立も私立もだ。唯一の対応策は「如何に魅力的な学校に進化し続けていくか」であり、本当の意味で「受験生があの学校で学びたい!」と思われるような学校にすることである。唯一絶対に、これしか方法は無い。その為には「学校の教育環境の整備充実」であり、「校長のリーダーシップ」、「卓越した人間力に満ち溢れた教師集団」にかかっている。「手練手管」で生徒は集まらない。「良い学校・・グッド・スクール」を目指して我々は謙虚に一歩づつ、前に前に進んで行かねばならない。それが生き延びていく秘訣だ。 

「明日の第二回オープンキャンパス」では驚くような参加申し込み者であり、その数今朝現在で645人に上る。昨年は7月29日、30日と連続で行い、合計660人の申込者であったが、今年は少し時期を変え、8月24日が一回目で420人の申込者、二回目の明日10月5日は、何と今朝現在で645人となっている。合計で1065人と言う数値で、これは対昨年プラス405人である。従って明日の授業体験は9時15分から、11時15分、14時15分と3部に分けて実施する。今朝、この数値の高さを「ぬか喜び」するのではなくてその背景と意味をK入試広報教頭に「じっくりと考え、貴職の考えを報告せよ」と指示した。



2024年10月3日木曜日

新中学校棟上棟祭の「習礼」とふくろうスタジアムのトイレ大改装

 「習礼(しゅうらい)」という言葉がある。(しゅらい)とも読む。私が存じ上げている宮司さんは“しゅらい”と言われる方が多い。意味は重要な儀式の前に予行をすることで、儀式の本番が始まる前に行う予行演習のようなものである。順序、立ち位置や作法の確認をするためだが、お祭りの規模が大きくなるほどに、必要性は増し、その方が祭事そのものが「ピシッ」と決まる。建設中の「浪速中学校棟の上棟祭を10月23日に予定」しているが、今日、校内の関係者を集めて「新中学校棟の上棟祭の習礼」を行う旨正式に宣言し、関係者は今から準備に入るように指示をした。 



既に「幣串」や「棟札」の準備は進んでいるが今回は全中学の生徒400人が勢揃いして引き綱をするから「予行演習」をしておかねばならない。中学生ともなればまだ幼く、スムースに物事が進むと考えるのは甘い。卒業式でも合唱コンクールでも予行練習をしているではないか。又雨天時の対応も考慮しておかねばならない。服装、生徒の立ち位置、掛け声などの動線の確認や順序などを入れたマニュアル本を作成し、本番前に予行演習しておかねばならない。特に本校の理事や評議員、PTAの役員など多くの方々にもご案内しており極めて大きなお祭りとなるだろう。動画や静止画の写真撮影のプロにも習礼当日は現場で確認しておいたほうが良い。本日役割分担を決めた。 



話変わって、昨日、私は結構大きな最終決断を下した。それは「浪速ふくろうベースボールスタジアム」のトイレの大改修を行う。費用は数百万円かかるが、前から気になっていた部位の大改善に踏み切ることにした。動機は先般、硬式野球の公式戦があり、スタジアムに久し振りに行ったのだが、この時に入試広報部のI先生から強く要望されたことが背中を押したのである。私を引き回してトイレを見させるのである。この先生こそスタジアムの建設に大きな貢献があった当時の野球部の顧問である。共にこの野球場を作った先生で、現場を良く観ている教師の提言に私は耳を傾ける。必要性は分かっていたが実行タイミングはこのような先生の熱意で、私は動かされ動く。



このトイレはスタジアム竣工時、急遽作り付けたもので当時お金も少なく、他の部位に比べ幾分見劣りしていたことは分かっていた。設備投資には順番があり、その後ハンディキャップの方々のトイレを設置し、その後、時を置いて男性と背中合わせにあった女性用のトイレを場所を離して新たに設置した。それまでは薄壁一枚で仕切られていた男子用と隣り合わせであったが、これを変えたのである。これは当然試合の観戦に来られる女性に大変評判が良く、今更ながら施設設備のトイレの位置やグレードは建物全体の評価に大きく繋がると思い知った。 

そして今回、満を持して男子用のトイレを全面更新する。今までの4個室を2個にして大きく取り、鏡や置台の設置、当然最新鋭のシャワートイレに変えるのは当然である。私はついでに小用のトイレも身障者用の個室も最新の機器に変えるように指示した。中央館や東館のトイレは最初から当時最新鋭の機器にしており本学院の品格の高さを内外に発信してきた。校外の施設で最も古くなったスタジアムも今回のトイレットの大改修で漸く恥ずかしい物でなくなる。それよりも誇りが持てる機器になるであろう。私は良い決断をしたと我ながら思った。「トイレは重要」である。

2024年10月1日火曜日

10月朔日、一斉参拝と理事長・学院長講話

 今日は10月1日、最近では余り使われていないが「10月朔日」とも言う。「朔日」は月の一番初めの日のことを指し、今でも1日のことを「ついたち」「さくじつ」と読む。これは月の始まりを表す「月立ち(つきたち、つきだち)」が次第に変化していき、「ついたち」となったのが由来と言われている。神道の世界ではこの朔日を大切にしており、全国の神社では1日には「朔日祭」と言って祭事を行っている。本校でも1日は大切に扱っており、今年1月から10月までで1日に一斉参拝となった月は2.3.6.7.10月と5回あった。学校行事や休日の関係で順延し、大体2日とかに実施しているが、やはり朔日1日の一斉参拝は何か厳粛に感じる。 



参拝の後の「理事長・学院長講話」では冒頭まず「衣替え」の話から入って行った。高温多湿の日本では文化として、暑くなる前の6月、寒くなる前の10月に来ている洋服を変える文化であるが、地球温暖化で今朝も涼しいとは言えない気温で又気温も上下するため、移行期間を2週間程度設けると話した。これが冒頭の「つかみ」の部分である。次に私は「授業への尊厳」について強調した。特に中学校生徒に対して授業始めや授業中の「悪ふざけ」などは真面目に授業を受けようとしている生徒に多大な迷惑をかけていると諭し、義務教育にも関わらず私立中学へ通わせてくれている保護者が負担して下さっている授業料へ申し訳が立たないと述べた。 


9月からスタートした「土曜日の3SSaturday Something Special)」の展開の為に50分授業から45分授業に移行しており、この5分の意味を生徒も教員も考えて欲しいと強調した。これは生徒と教員とのコラボレーション、理解と協力が必要であると言い、教員は「事前の教材研究用意」「ベル着」を、生徒は「静粛な授業を受ける心構え」が重要だと強調したのである。これは単に中学生だけではなくて高校生にも当てはまると述べた。



 次に私は兼好法師が鎌倉時代末期に書いた随筆である「徒然草(つれづれぐさ)」に話を転換し、高校古典の教科書にも出てくる「人の亡きあとばかり悲しきはなし」について概要を生徒に伝えた。読んで字の如し、「人が死んだ後ほど悲しいものはない」という意味であり、神道の死生観について触れ、とにかくまだ学び過程にある生徒はルールを守り「今を一生懸命に生きる」という気持ちが大切だと説いた。前述した「授業の尊厳を守る」というのもそのような意味であると声を大きくして諭した。そして話の最後に「逆縁」の言葉を出し、この意味は「子どもが親より早く亡くなる」という事だと教え、これは悲劇以外の何物でもなく、自分の命を守り長生きするのはご両親に対する最大の親孝行だと述べて10月朔日の理事長・学院長講話を終えた。