2020年10月23日金曜日

教員のクラブ活動指導と健康障害

第一報は朝日が4日前に報道した。その後各社が記事にしたが今朝は大阪日日が報じている。各紙とも結構大きな扱いである。それは「教員の大量処分」に関するものだが、中身は学校のクラブ活動にマイカーに生徒を載せて練習試合等に出掛けたのは重大な内規違反だと鳥取県教育委員会が83人もの関与した教員を処分したものである。このことについては議論の余地はない。自動車保険など確認せず万が一交通事故にでもあったら取り返しのつかない事だから処分は仕方がない。私が注目する点は各紙の記事にあるが学校のクラブ活動は「教員の自主的な取り組み」「教員のボランティア活動」であるという点である。公式戦出場は校長の職務命令と言う形はあるがあくまでクラブの自主的な練習は教員の本来業務ではないという記事の部分である。

 確かに教員は、特にクラブ活動に熱心な先生方には「頭が下がる」ほど一生懸命に生徒の為に頑張ってくれている。しかし忘れてはならないのは前述したクラブ活動に関しては日本全国共通した考え方があるという事である。学校の教員の本来業務は教科や生活指導や進路指導などでありクラブ活動の指導とは明確に一線を敷いているのである。可哀想な気がするが現状の日本のマジョリティはそうなのである。だから基本的にクラブ活動は基本給与の範囲ではなくて無償から戦後出発している。しかし頑張る教員への褒賞の意味からクラブ指導手当の概念が生まれ各校はそれぞれの経緯を反映して「手当てを支給している学校、何も支給しない学校」と分かれている。

 私は近隣の複数の私立学校の状況を全て調査し本校と比較したがダントツで本校は処遇している。圧倒的に多いのは平日のクラブ指導は0円の学校である。土曜日、日曜日は時間制限を設けて一日1500円から2000円を出している学校もある。教員が時間をオーバーして働いているのは間違いなくクラブ活動である。この「クラブ活動の在り方」について私は事務統括の理事と高校校長(理事)に職務命令を発して整理するように指示した。土日もなく、休みもご家庭をほったらかして一見過重な時間オーバーは知らず知らずのうちに肉体と精神を痛めることになりかねない。最も好きなスポーツを生徒と走り回るのは決してしんどいことにはならないが、「じゃ、良いですよ、好きなだけやってください!」と私が賛成する訳にはいかない。どこかで線を引かないと教員の働き方改革には繋がらない。

 現在の労働行政では、一応、過労死ラインは80時間(月に20日出勤とすると、14時間以上の残業・12時間労働)とされており、 これは、健康障害の発症26ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働(活動)をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいという目安があるからである。これは、あくまで目安であって絶対的なものではないが、学校社会も教員の健康障害について考えなければならない。一般的には6カ月を平均して45時間を超える時間外労働が行われた場合健康障害と業務との関連性は強まっていき、これを超えて期間外労働時間が長くなるにつれて、その因果関係はより強まっていくとされている。

本校では教職員の健康を第一に考え、もって「働き方改革」を進めなければならない。コロナ禍の今こそ、その道に向かって法令順守もさりながら教職員一人一人の自覚が大切である。私は最近この事ばかり管理職や校務運営委員会、職員会議でも話している。26日の学校安全衛生保健委員会では学校医の先生に参加を願い、又長い労働時間の教員は学校医の面談と診察を受けさせるようにした。元気バリバリでクラブ大好きな若い教員であったが既に3人の教員を医院に行かせた。当然全く問題はないがそのような時代になったという事である。仕事が終われば学校で「うじゃうじゃ」居らずに早く帰宅して欲しい。ご自宅で更に更に立派な教員になるように「自己研鑽」を図って欲しい。昔から勉強は家でやるものだ。教員は峻別というか区別が出来なくてはならない。