本校で基本的に生涯教員としての身分が保証されている「専任職員」に成れる確率は他校に比べると幾分高いと言えるが、それでも「門戸は狭い」と言った方が良いかも知れない。確率が高いのは生徒数が多いからその分教職員を必要とするからである。本校の人事上の課題は「専任比率」が未だ低いことである。本校での「専任への道」は5ステップに別れている。まず多くの教職員の観察を経て相当の点数を稼がねば舞台に上がって来られない。その期間は原則3年間である。3年間は地道に「私立学校の教師としての姿勢と働き」を評価させて貰う。3年経って舞台に上がることが出来、幕が開けばまず「管理職による理事長への推薦」がある。そしてその後「理事長の授業観察」をして教師本来業務の腕を見せて貰う。その後理事会で「経歴審査」が来る。そして次のステップが「小論文」である。理事長アラウンドを3点あげてその論評をせよと言うテーマである。そして最後は3月理事会・評議員会での「面接試験」となる。以上で目出度く本校の専任教職員なのである。
このアラウンドでも何回も触れて来たが今年4月1日に専任になる可能性のある教員は女性一人を含む5人の先生方がいる。これらの先生方から小論文が出て来た。これを私は熟読吟味して驚いたことがある。何と5人の内実に4人が最も心に触れたテーマが「常若」なのである。このような事は初めてであった。私は驚くと共に嬉しく思った。長い間心の奥底に仕舞い込んでいた、教育現場に私が残す言葉として「常若」を選び出し、それを亡父を除いて私が人生で最も敬愛する神社本庁長老、大阪天満宮名誉宮司、学校法人浪速学院名誉理事長である「寺井種伯」先生に揮毫して頂いたあの「常若」だったのである。寺井先生と私はこの15年間、実に様々なことを共にし、全てを任せて頂き、応援して頂いた。私は寺井先生のご期待に応えたい一心で頑張ってきたのである。その先生も齢を重ねられ、益々輝いておられる。先生のご存在が今もって私の頑張れる源なのである。私は今回の5人の専任候補者の小論文のコピーを寺井先生に送付することを決めた。さぞ喜んでいただけると思う。
理事長・学院長のAroundを拝見し心に残ったお話は様々ありますが、私はその中でも『「常若」の精神(5月27日)』『初心を忘れるべからず(9月18日)』『学校のニューノーマルは?(5月25日)』の3つが心に残っています。その中でも特に感銘を受けました『「常若」の精神』について考えを述べさせていただきます。
理事長・学院長先生のAroundにあった『「常若」の精神』にある「単に継続だけなら停滞と見なされかねない。古くなったものをつくり替えて常に若々しくして永遠を保つ」という言葉と同様、私は常に前向きであること、過去の自分にとらわれず絶えず学ぶ姿勢をもつことを心がけています。
私が前向きでいようとする理由は、私の経歴に関係があります。私には約6年間仕事を辞め子育てに専念していた期間があります。我が子が成長するのを側で助け、見て喜び、充実した日々であったことは間違いありません。母親業はもちろんのこと、ボランティア活動などにも積極的に参加し、無為に過ごしてはいなかったと胸を張ることができます。しかしそれが4・5年目を迎えたふとしたときから、このまま一生を送って良いのか焦りに似た悩みが頭を離れなくなりました。些少ではあれ自分がそれまで積み重ねてきた学びは何のためだったのか、配偶者と引き比べ社会に貢献するという点に劣るのではないか、自分が生きてきた足跡を残したいと考えるようになりました。結果、教職を非常勤いう形で再開しました。出産前と大きく変わったことは、配偶者や両親、何より子どもたちにさまざまな協力を得なければ、自分の仕事が成り立たないことです。母校の校訓「報恩感謝」にあるように、私は自分のしたいことを続けるために周囲から多大な支えを頂いていることをいつも感じています。自分がいま働くことができることは「有り難い」ことです。だからこそ私は仕事を大事にし、支えてくれる人に顔向けできるよう、生徒に仕事に全てに対し真面目であること、全力を尽くすこと、何より前向きにいつも楽しむことを忘れずにいるよう努めています。
またそれと合わせて、過去にとらわれず絶えず学ぶ姿勢を持つようにしています。それは自分の今の授業がまだまだであると感じ改良すべきだと思うこと、自分が成長することで今年より来年はよりよい授業が出来るようになるはずだと思っていることもその理由ではありますが、1番の原因は教育に大きな変化を感じたからです。高等学校にはあまり変化が現れていませんでしたが、小学校の授業参観では新学習指導要領に沿うためICTの活用や主体的学びが顕著になっていました。この世代があと数年たって高校に入学してくる頃には、自分が受けてきた授業とは違う授業にも取り組む必要があります。だからこそ、経験がないその授業に対応するため、どのような授業をすべきなのか学び変わっていく必要があると思ったからです。
そのように絶えず新しく学んでいきたいと思う私にとって浪速高等学校は、学び自分を高めるのに最適な環境です。ICT設備は整備が完了しており、さらに教員の資格取得を後押ししてくださり、公開授業などでその技術の研鑽の場まで設けて下さいます。様々な取り組みを学び実践してみることができ、大きく変化していく教育の先進的な現場であることは間違いありません。さらに、浪速高等学校は素晴らしい先生が沢山おられます。ICTの活用や新しい授業への挑戦だけでなく、教科の指導、生徒への指導、日頃の学びへの姿勢、人としてのあり方など年配の先生方だけでなく年若い先生方にも本当に学ぶべきところが多く、沢山の刺激を得ることができます。このように恵まれた環境の中で、刺激を受けることの多い人々に囲まれて、日々学び自分を高めていけることはとても幸せです。
担任業務や分掌業務など諸先生方に比べて全く経験値が足りず、恥ずかしさや焦りを感じる日々ですが、回り道のなかでも培ってきた常に前向きであること、絶えず学び前進しようとする姿勢には自信があります。奇しくも私には数年後に大学入試に臨み自分の一生を決める娘がいます。その娘に自分の働く姿を自信を持って見せていられるようにしたい。そう思うからこそ、これから大きな変化が予想される教育現場ですが、『「常若」の精神』と同様、現状の自分に満足することなく、積極的に学び変化を厭うことなく努めていきたいと思います。またそれを当たり前と思うことなく有り難いことと考えて、前向きに楽しむことも忘れないでいたいと思います。
近頃は事務所前を通るとき「常若」の扁額に目が引き寄せられ、自分が問われているように思います。あの額を心の戒めに私は「常若」でありたいです。