2021年10月15日金曜日

「歳々年々人同じからず」

 昨日の職員会議に先立って高校3年、中学3年生の卒業アルバム用の教職員記念撮影がそれぞれに行われた。学校関係者にとって卒業という言葉は実にインパクトある言葉である。この時期になると「ああ、遂にこの季節になったか」とある種、寂寥感みたいな感慨を覚える。今年1年、共に「同じ釜の飯を食った」いわば仲間との記念ショットであるが、来年、この記念写真に入るメンバーは大半の教職員は同じでも、比較的大きな数で置き換わるのが実情である。故人いわく、「歳歳年年人同じからず」。意味は毎年毎年、人は入れ替わりがあり、顔ぶれが異なる。人の世の無常であることをいうのだが、これには後の句があって「年年歳歳花相似たり」。それでも花は毎年毎年同じように咲く。



今日は公開授業があった。常勤講師3年目の数学科の教師で高校2学年での授業参観を望まれて赴いた。本校では「人材(採用・育成・評価)センター長」という重要な職位があり、現在は浪速中学校校長が兼務している。中高にまたがり、教員の採用から育成・評価を行い、正規職員として採用すべきであるとの意見具申を私に行う事の出来る重要な権限と機能を有している。今日の公開授業も人材センター長の意見具申を受けて、実施は数学科の科長の執行で行われた。教員にとって最も重要な業務と言える「授業を参観」することは私の楽しみな業務の一つである。今日は「数学Ⅱ」の単元「三角関数の加法定理」についての高校2年生の理系クラスで行われた。公開と言うように数学科の教諭も大勢参観している。

 


私が注目して観察するのはまず声量、生徒への声かけ、50分の時間配分、ICTの活用、生徒の観察、机間巡視等々様々であるが一言で言えば「求心力のある授業かどうか」である。そして「分からせようとする気迫と知恵」がその教師から伝わってくるかどうかである。その為に「生徒への当て」「誘導」「ICT」「繰り返し」「生徒間同士の話し合い」等々手法は多くあり、今日のN先生も流れるように進めた素晴らしい授業だったと思う。ポイントは生徒を巻き込み、教師と生徒が教室内で一体となり、緊迫感は失わずに豊かな雰囲気が漂いながら50分が経過しているかどうかである。良い教師とはそれが可能な先生である。N先生には、何か今後の可能性を強く感じた。 

この先生について言えば学歴は偏差値の高い有名な府内の私立高校から現役で大阪教育大学に進学している。大学での研究は「行列解析学」で、素晴らしいのは文武両立でバレーボールをやり関西学生リーグで2部昇格を果たした人材だと言う。大学新卒で本校を選択してくれた。公開授業の後、数学科の科長、それに高校校長が私の部屋に来て講評を受ける仕組みだが通常に比べ時間を多く割いて講評させて貰った。数学と言うと一見難しそうに思うがこの教科の論理性と「解を得る、解に至った時の快感」を是非今後とも生徒に教えて欲しいと思った。 

この先生、「偉丈夫」である。「偉丈夫」のお方である。「いじょうぶ」とは体が大きくたくましい男子の事を言い、また、人格のすぐれてりっぱな男子と物の辞書にはある。「巡査」で国木田独歩が「骨格の逞しい、背の高い堂々たる偉丈夫である」と書いたように立派な偉丈夫な先生になって欲しいと思う。身長181センチ、体重96キロ素晴らしい体躯の持ち主、ただ汗かきかも知れない。授業中赤いタオルを離さずに顔と首、そして後頭部の汗をぬぐっておられた。かくいう私も汗かきだ。男はそれで構わない、良しだ!