「ビブリオ」という言葉がある。これは書物などを意味するラテン語由来の言葉で、現立命館大学教授の谷口忠大氏が京都大学研究員時代に在籍していた2007年、「本を通じた社会的繋がりが生まれる」ことを期待して始まり、2010年には普及委員会が発足した。これが今の「ビブリオバトル」となり、「首都決戦」と言われる全国規模の大会にまで成長した。いわば「人を通じて本を知り、本を通じて人を知るゲーム感覚の知的書評合戦」である。本校は最初からこの活動に参加しており、6回目となった今年も大阪府大会に参加する。2年前には全国大会にも出場した、云わばこの分野の名門校と言える。今日がその校内予選大会であり、選りすぐりの高校2年生が4人、1年生が2人の計6人で争われると聞いて会場の中央館8階の図書館に16時に赴いた。
大阪大会は10月31日(日曜日)の午後、大阪府咲州庁舎で行われる。ビブリオバトルの目玉はバトラー(発表者)たちがおすすめの本の魅力を5分間で紹介しあい、聞いていた人たち全員で「一番読みたくなった本」(チャンプ本)を決める。一人5分間で本を紹介し、それぞれが発表後に質疑などを2分間行い、「どの本が一番読みたくなったか」が投票されるのだが、本はどのような本でも良いがコミック本と雑誌は除かれる。私は今どきの高校生の好きな本はどのようなものであるかは大体分かっているがそれでも本好きな私としては興味あることなのである。
小説と言えば我々の世代は直ぐに「吾輩は猫である」を思い浮かべるが、全く異なる。まさに現代に生きている若者の発想は私とは根本的に違うのである。この小説は漱石の長編小説であり、処女小説でもあるが、1905年1月に「ホトトギス」にて発表された。「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。」があの有名な出足の文章である。とにかく「大学入試が好む作家」だと言える。現代文の問題集を解くと大抵夏目漱石の問題がある気がするが、どうも著作権処理が面倒ではない作家であり、夏目漱石が好まれるのは、死後50年経過し著作権が切れているからと言う人もいる。でも私の本好きはこの小説から始まった。今でも私は漱石が大好きだ。生徒も是非紫式部、樋口一葉、漱石、鴎外、芥川竜之介、川端康成等の歴史上の文豪も大切であり、これらの古典も是非勉強して欲しいと思う。
生徒らがバトルに出してきた書物は聞いたこともない題名の書物である。「夢をかなえるゾウ」「死神の初恋」「時給三〇〇円の死神」等々であったが私には題名さえ初めてであった。作者も全く知らなかった。図書館は新校舎建設時に気合を入れて設計したものであり。ここでこのような知的な雰囲気が漂うビブリオは壁にかけている夏目漱石先生もさぞ喜んでくれていると強く感じた。この校内ビブリオバトルは今の国語科の指導教諭のT先生が発掘して育て、始められたものであれから6年も経ったのかと感慨深い。国語科の教員総出で対応してくれるイベントであり私はこういう光景を見るのが嬉しい。しかしそれにしてもこの種の大会に出て来る生徒のレベルは高い。素晴らしい!
全ては生徒の為でありこういう光景が出て来る限り本校の未来はまだまだ明るく発展すると思う。全ての教科が大切だが日本語を扱う国語科の教員は中でも重要であり、本校には素晴らしい先生が揃っていることが嬉しい。しかしもっともっと国語の先生が欲しいのだが、国語の先生は相対的に極めて少なく私立、公立問わず探し求めているのが実情である。国語科の先生方、有難う。