「春過ぎて 夏来たるらし 白たへの 衣ほしたり 天の香具山」
「春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
万葉集の写実的な力強い歌から年月を経て、もはや香具山には衣を干す風習も無くなり選者の定家は「伝聞」の形となる「夏が来たら衣を干したと言う」風に改め、元歌の持統天皇の偉大さと追憶に浸ったのではないかと私は勝手に解釈している。
その後私の話は「温故知新」と「不易流行」という言葉の説明に移り、前に学んだことや昔の事柄をもう一度調べたり考えたりして、新たな道理や知識を見い出し、自分のものとする努力を強調した。「温」は“あたため”と読んでも良いが「たずね」と読むべきと教え、古いものを、簡単に切り捨てるのではなくて、それを出発点に新しい事柄を知る重要性を語った。又不易流行は俳聖と言われた「松尾芭蕉」が使った言葉で“いつまでも変わらないものの中に新しい変化を取り入れる”ことを指す言葉であり、新しさを求めて変化をすること自体が、世の常であるということを教えたのである。
そして結びの言葉として「今から99年前」に旧制浪速中学校を先人は作ってくれ、僅か204人の入学者で歴史を刻み、99年後の令和4年4月1日の入学者は中高合わせて1013人、教室数は24教室と今や大阪を代表する私学に育ってきたのも、この地に学校を作ってくれたからこそ「今がある」と私は声を大きく生徒と教職員に伝えた。特に今月の講話は教職員という言葉をわざわざ出して先生方にもお伝えしたのである。君たちの将来は君たち自身が変えて行かねばならない、今から20年後、30年後、40年後に自分はどうありたいかを考え、今この時、行動するのは「目に前にあることに一生懸命に取り組む」ことだと述べて本日の一斉参拝の講話を終えた。