2025年1月31日金曜日

昨日の卒業式、記憶に残る「答辞」

 昨日の高校卒業式、一夜明けて、心地よい余韻の中で思うことを一つ。やはり卒業式には「仰げば尊し」が良い。1884年(明治17年)に発表されたこの日本の唱歌は卒業生が教師に感謝し学校生活を振り返る内容の歌で、特に明治から昭和にかけては学校の卒業式で広く歌われ親しまれてきた。ところが歌詞2番の「身を立て名をあげ」の部分が立身出世を呼びかけていて「民主主義」的ではないという見方から、学校の中には2番を省略して3番を2番として歌うこともあったらしい。しかし漢文学者の加地伸行先生は原点となる「孝経」の意味を解説し、「身を立つるには道を行い、名を後世に揚げ、以て父母を顕すは、孝の終なり」を踏んだ歌詞であり、立身出世ではなく、考道を実践し心身の修養を目指す儒教的な道徳を歌ったものと指摘している。教育の目的そのものではないか!本校はこれからも「仰げば尊し」を必ず卒業式では歌い続ける。 


それにしても式典の中で「校長式辞」、「御来賓の祝辞」、「在校生代表の送辞」を聞いた卒業生代表のM君が最後に語ってくれた「答辞」に私は感動した。入学後コロナに泣き、コロナと戦い、そして仲間と絆を強めていき、卒業式に臨んだM君の「抑揚ある」良く通る声で会場一杯に語った答辞をここに披歴したいと思う。まさに教育の成果、教育の為せる業をこの文章から窺い知れる。彼は現在難関私立大学合格を目指して土俵に上がり、制限時間を待っている。「祈る、合格!」

 寒椿の美しさが際立ち、冬鳥たちも旅立つ準備を始めた今日、この時、私達820名のためにこのような盛大な式典を挙行していただき、誠にありがとうございます。また、ご多忙の中にもかかわらず、ご臨席くださいましたご来賓の皆様、そして木村理事長・学院長先生、飯田校長先生を始めとする教職員の方々、ならびに関係者の皆様に、卒業生を代表して心より御礼申し上げます。 

 思い起こせば3年前の45日、桜が満開に咲く中、この体育館で入学式を迎えました。これからの未来へ期待する反面、コロナ禍の下、マスクをつけている間はずっとどこか不安だったことをおぼえています。しかし、校外学習から始まったクラス行事や部活動などで仲間と親睦を深め互いに研鑽していく中で不安も次第になくなっていきました。また授業においてもクロームブックを活用した新しい授業を受け、何もかもが新鮮でした。 

夏には猛暑の中、日帰りでお伊勢参りに参加しました。他校にはない、この伝統的な行事を通して、神道についての知識が深まり、浪速高校の生徒としてのアイデンティティを学ぶことができました。そして浪速高校生としての実感を改めてもちました。

9月に開催された浪速祭ではコロナの影が残っており、残念ながらコロナ前のように模擬店が立ち並ぶものではなく、各クラスのビデオ制作となりました。しかし、クラスの仲間とより良い映像をつくるために放課後まで話し合い、1つの作品にクラス全員で打ち込むあの時間はとても楽しく忘れられない宝物となりました。 

 2年生になり、徐々にコロナの風も過ぎ去っていくと、浪速高校がまた一段と賑やかになっていく雰囲気を感じました。浪速高校で初めての体育祭が開催されました。学年・クラスを問わず自分のチームを心の底から応援する姿がヤンマースタジアムに溢れました。目の前の戦いに、全員で喜んだり悔しがったりするあの時間、あの場所は強く思い出に残りました。

修学旅行では沖縄・道南・道央・道東・長崎・関東六つのコースの中から、思い思いの場所へ、クラスの枠を越えた仲間と45日の旅にでました。私自身は沖縄に行きましたが、そこでは、圧倒的で壮大な自然の下でより輝く友達の尊さを噛み締めました。そして、大阪とは異なる文化や空気を直接肌で感じることができたとともに、壮大な自然を前に、神社神道の教えの一つである自然崇拝や自然への感謝の念を強く感じました。そのような楽しい学校生活の中で、部活動では新しくできた後輩への身の振り方がわからなかったり、自分のあり方に悩んだりする時期でもありました。 

 3年生になると、毎日が慌ただしくなり進路選択の中で、自分の理想と現実の乖離など思うようにいかないことが何度もありました。そのような不安な時、私たちを支えてくれたのは、いつも話す友達、担任の先生、家族でした。休み時間や放課後の何気ない会話や笑い、時にはダメなものはダメだと指摘してくれるかけがえのない友達。この浪速高校でたくさんの素晴らしい仲間と巡り会えたことは幸せでした。本当にありがとう。

そして、学校生活の悩みから勉強や進路相談にいたるまで親身に寄り添ってくれた、担任の先生をはじめとするたくさんの先生方。先生方はいつも私たちのことを真剣に考えてくださり、最後まで向き合ってくれました。先生方から学んだことをこれからの人生に活かし、それぞれの道で成長していきます。

そして何よりも、今まで私たちを支えてくれた家族には感謝の気持ちでいっぱいです。仕事もあるのに毎朝、昼と夜の2つお弁当をつくってくれたり、行事には駆けつけてくれたりと、本当にありがとうございました。立派になった姿で恩返しができるよう、これからもひたむきに努力を重ねて参りますので、どうか温かく見守っていてください。 

 今日、私達はこの浪速高校を巣立ち、それぞれの道へと進んでいきます。改めて、今日この場を迎えられたありがたさ、感謝を胸に私達はそれぞれの夢へと羽ばたいていきます。

最後になりましたが木村理事長・学院長先生、飯田校長先生をはじめとする教職員の方々のご健勝とご多幸を、そしてNext100に向かう浪速高等学校のさらなる発展を祈念いたしまして、答辞とさせていただきます。

 令和七年  一月三十日 卒業生代表 〇〇 〇〇