「帯に短し、襷に長し」は、「中途半端で役に立たないものやその状態のこと」を指すことわざ。例えば、ある布の長さについて、「着物の帯に使うには短くて長さが足りない。かといって襷として使うには長すぎて邪魔になる」という状態を想像してみると分かり易い。最近では、物に限らず状況や人についても用いられるようになっており、中途半端であるため役にも立たないことや使い道がないことを指すようになった。これを言われたりすると「無能」みたいに言われたと感じ、落ち込むだろう。これに対して役立たないものの表現に「無用の長物」と言う言葉もある。これは分かり易く、より直截的で「あっても役立たないもの」を意味する。経営者として以上の二つの諺みたいな物を作ったら、それは間違いなく「失敗作」で無駄な投資になる。
最近、以下のような事があった。中学校棟も竣功し、この辺で懸案であった生徒教職員の為にテニスコート周りの通路の雨対策として本格的な「屋根の設置」を考えていたが、担当から出て来た案は右側方向の西館や遊学の道へのアクセス通路のみに屋根を付ける案であった。これを見た私は「左側方向にも屋根を付けるべし」と指示した。これで中央館後ろ側の通路には屋根が付き、特に生徒の動線として多聞行のバス乗り場に行く時や、部活動でコート周りを走る時に雨天を心配することは無くなる。間違いなく「帯に短し、襷に長し」とはならず、まして「無用の長物」にもならないと確信したからである。
このような局面はこの19年間、多くあったと思うが後で失敗したと思う事は皆無であった。又振り返って考えてみると、出来上がりには「少し贅沢な方が良い」と思う。少しの投資資金をケチったばかりに「役に立たない」「完全にはカバー出来ない」ものを作っては後々評価はされないし、「二重手間」になる。物を建設するときは幾分豪華に、幾分贅沢に、幾分長めに、幾分高くと考えた方が良いと言うのが私の結論である。最も重要なことはその次の段階をイメージして設計しなければならない。このケースでも、この工事は直ぐに終わらせ、次のテーマは東館とコート間のバスの待機場所まで屋根を付ける。そして入試広報部や保健室に至るショートカットの入口を設置すると中央館や東館の「奥の院」を通って、生徒やお客様が入ってくることにはならない。テニスの観戦者も雨の心配は無くなる。極めて便利な屋根付きアクセスとなる。
以上のように物を作る、建設するという行為は「将来構想」を常に頭に入れてコンセプトデザインをすべきであり、さすれば「取り壊し」や「仮設工事」など無駄な出費は抑えられる。「詰将棋」みたいな感覚で進めると良い。無駄な一手にならないようにその一手に渾身の力を籠めるのだ。本校は今まで仮設と言う工事をしたことがない。実はこれが密かな私の自慢である。