昨年、噺家の大御所である桂福團治師匠から「伊勢へ七度、熊野へ三度」と言う言葉を教えて頂いた。伊勢神宮へは7回、熊野三社へは3回、お詣りすると言う事だが、これはたびたび参ること、信心の深いこと、また、信心はどんなに深くしても限りはないことの例えだと後で物の本で学んだ。有名な落語の「伊勢参宮神乃賑(いせさんぐうかみのにぎわい)」、通称「東の旅」と言う落語は伊勢参りの道中を描いた上方落語の名作であり、この中に先の言葉は出て来ると福團治師匠はおっしゃっていた。大阪の落語家はこの話から修行に入るともお聞きした。確かに蒸し暑い日で時折小雨が短く降る伊勢であったが私はお伊勢参りを行った。この20年間、数えきれないくらい位の参拝である。優に100回は超えているだろう。
昨日は令和7年度の「第72回伊勢修養学舎」であり、私は開校式でのスピーチの為に第1班に帯同した。生徒総数は1050人を超え、指導に当たる教員は通算で125名と言う大人数が5班に分かれて神宮会館を拠点に「神道の何たるかを学ぶ最重要な学校行事」である。事務室のKさんの運転する学校車で7時20分に出て一路「内宮宇治橋」に向かった。10時30分には到着したが大勢の人で確かに賑わっていた。広い境内をただ黙々と歩き、「内宮」に参拝。湿度が高く、カメラのレンズも曇るとKさんは嘆いていた。
一人参拝の後、翻って「神宮会館」に到着し、本校理事でもある館長さんと暫しの懇談を行い、昼食のご接待を賜った。その後生徒が講堂に打ち揃ったとの連絡を受け「開講式」に臨んだ。そこで理事長・学院長として「開講挨拶」を行った。これがメインの責任である。この模様はビデオで録画され後に続く2、3、4、5班に同じものが開講式で映しだされる手筈となっている。その後「校長講話」が続き、その後は生徒全員が4台のバスに分乗し「猿田彦神社」に向かい校長と生徒代表による昇殿による正式参拝を行った。私はこの「道開きの神さま」について短い講話を行い、「志しを持ち努力と忍耐、感謝の気持ちを持つことで間違いなく君たちの道は必ず切り拓ける」と激励した。
次はバスで10分程度の処にある「外宮」に参拝したのだが、その頃には曇りも幾分陰り青空がのぞいていた。その分本当に暑い日であったが生徒は一糸乱れず素晴らしい歩きでご本殿に向かい、「御垣内参拝」を許された校長と生徒代表に合わせて「柏手」を打った。これで私の役目は終わり、後は校長、副校長、学年主任、神道科教諭に任せて学校車に乗って学校に戻った。時は夕刻の17時30分であった。昨年と全く同じ時間で、本当に良い時を過ごしたと「幸せな疲労感」を感じ、関係する教職員へのお土産である「伊勢うどん」を車から降ろしたのである。