2020年12月17日木曜日

私立学校の誠意

折角自分が選んで入学した学校を途中で止めて他の学校に移るケースは多々あることだ。高校でも中学でも、公立でも私立でもある。「折角入った学校なのに勿体ない」は昔は通った理屈かも知れないが今は通用しない。「無理して行かせる必要はない。学校は世の中に多くある」が羽振りを効かせる時代になった。当然転校を考える生徒は今いる学校に「是正を訴えて」現状からの脱却を願うが、結果として上手くいかず、その学校の対応に不満が募り、最後は「転校します!」となる。私の基本姿勢は「転校生を温かく向かい入れる」に徹している。「たかが学校、されど学校」だけど「転校のハードルを殊更高くする」必要はない。学び途中の子どもたちは国の宝であり、「おいで、おいで、何の心配もないよ!」と向かい入れるべきである。それが私立だ。 

府立、私立と18年間も校長をやってきたが今まで多くのケースを私は見て来た。実に様々で一冊の本が書けると思う。転校してきた生徒と保護者は「複雑な思い」を有していると考え、まさに「温かく」しか言葉が見つからないが、当初は囲い込むようにカバーしてやらねばならない。お陰様で本校の先生方はこの辺のところが上手く、だから「面倒見の良い学校」の評判を得て府内でも有数の私立高校、私立中学として生徒の集まる学校に育ってきたのだと自負している。だから案外、本校では転入が多い。結局は二番手で選ばれたのだから、喜んでよいのか複雑な思いもあるが、転入先に選ばれることは悪くはない。「グッド・スクール」の一つの証明である。

今回も浪速中学校に2名の中学2年生が一人は私立から一人は市立から転校の希望があった。合計2名の中学生が増えたのである。そのまま浪速高校に進学してくれるから嬉しい話である。転入試験の成績は極めて良く、一人は歴代4位の高得点を取っていた。このまま伸びれば国立大学には手が届くだろう。とにかく普遍的に言って、今通っている学校に対して「不満」を持つ生徒や保護者は少なくはないと思う。その理由は様々であるが基本は「人間関係と学校の対応姿勢」である。「生徒間あるいは生徒と教員間で話がこじれる」ケースが大半である。生徒間の場合、話がこじれる前に担任、学年主任、教頭などが間に入って双方の思いを汲みながら「仲裁」し仲直りさせれば継続される可能性はある。子供間のいさかいや争いを双方の親同士に拡大したら傷口が大きくなるだけだ。しかし生徒と教師となるとその好転する可能性は極端に少なるから「転校」となる。その学校の教師が「信じられなくなる」ともうお仕舞である。「顔を見るのも嫌」となる。

 いずれにしても「スピーディな対応」が大きな効果を生む。私は「とにかく早く動け」で教員を指導している。正直無茶ぶりの保護者が居ないわけでは無い。それでも事態を迅速に把握し、スピーディにご自宅を訪問し、学校側の動きを丁寧に説明することで上手くいく場合もある。管理職が動けば更に効果は上がる。親は「我が子が可愛い一心」であるから我が子の扱いを学校側の動きから掴もうとする。これに誠意で応えるのが「学校の誠意」というものである。「至誠に悖(もと)るなかりしか」だ。それでも理解していただけない場合は転校しか方法はない。残念だが仕方がない。今回の二人の転校生はどのような経緯で本校に来たのか、その学校はどのような対応をしたのか、本校では良く分からない。しかし問題なければ転校する訳が無い。