理事会も無事に終わり、ほっと安堵である。その翌朝、天からのご褒美かなと思うくらい「嬉しい事」があった。一つの事件と言っても良い。パソコンを開くと以下のようなメールが入っていた。「木村理事長、この度はCELTA取得に関しまして、多大なるご支援を頂き、また、先ほどは励ましのお言葉を頂きまして、誠にありがとうございました。このご恩を一生忘れず、生涯、教師として努力し続けます。今後ともよろしくお願い致します。」という内容である。差出人は英語科のT先生で、この度「CELTA (Certificate in Teaching English to Speakers of Other Languages)」の資格を取得した。これは英語教育に関係する万人が認める、現時点における世界最高峰の英語教員資格であり、この資格は英国のケンブリッジ大学の学位取得に相当するとみなされている。これさえ持っていれば世界中の何処の英語教育機関において、最も有利な資格保持者として遇されるものである。
とにかくこの資格を取得する「ハードさ」たるや、言葉が無いくらいで心も体も通常では持たないと言われている。まず受講できる為の条件が難しく、ネイティブスピーカーであること、もしくはネイティブ同等の英語力を所有していることとされている。それを証明する資格・スコアの提出(英検で言えば1級)、および面接と筆記試験、小論文にて最終認定されるものである。T先生は日本人で英語は母国語ではないし海外留学経験もない。この条件でよくぞ立ち向かってくれた。ここが素晴らしい。更に受講条件の英語の面接試験2時間、筆記試験5時間、小論文5本、それに志望理由書の提出は「死にそうだった」と言っている。すべて英語で、話す相手はネイティブの英国の先生だ。日本もようやくその資格の重要さに気づき、受験生が激増しているが、資格取得者はまだ数名しかいないと言われている。それくらい難しい資格なのである。
受講する資格を得てもその後が「地獄」だ。内容は英語教授法の実践的な知識と技術を学ぶもので、・30ユニットの講義とレポート・140時間目安以上の課題解決・9週間の教育実習・35時間の授業見学と評価・4種の論文提出、その他、平日2時間以上、週末12時間に及ぶ講義とディスカッションである。目の回るような内容である。そして認定に至るには・60以上の項目において評価を受け、実習とレポートの厳正なる審査を経て、合否が決まる。複数の審査官による採点と、そしてケンブリッジ大学の最終認定に至るのである。書いていて自分でも「頭がくらくら」してきた。当然、脱落者多数で失格、もしくは自主辞退となる。「2020年度の日本人取得者は3名で関西圏の高校教員としての取得は本校のT先生」なのである。今まで日本人の有資格者はわずか12名と言う。
このような教員を持てて私は幸せ者だ。受講料の数十万円は学校が負担し、英国とのインターネットによる回線費などは大した問題ではない。毎月180時間、土日もなく向かってくれた。目標を立てて「死に物狂い」で頑張った先生を称えたい。先になるが夏の賞与を加算して具体的に理事長の喜びを表したいと思う。これでCELTAの有資格者はCELTA-Sを含めて2人となった。更に2人の先生がチャレンジするという。このような先生に教えを受ける生徒は幸せ者だ。今後とも私は教員の自己開発、自己啓発には最大限の支援を惜しまない。「英語教育の浪速」を標榜する為にも英語科の教師は頑張って貰いたい。その姿を見て生徒は育つ。教師は生涯学習の職業である。挑戦する先生が良い。頑張って欲しい。