2023年6月23日金曜日

遂に井戸茶碗の”かいらぎ”が出た!

 学校は一見、落ち着いて大きなトラブルも無く、流れている感じだ。今日は6月23日、新中学校棟の建設現場を視察したが順調に工事の前準備は進んでいた。とにかくプロの工事屋さんは「事前準備と段取り」を見事にやられる。これが安全かつ順調に工事を進める要諦らしいが、これは何事にも通じる話だ。南海辰村建設の二人の若いエンジニアに私は好感情を持っている。自分が歳を食っているだけにこのような若者には期待が大きい。現場に行って様子を見た後、部屋に戻るのだがその時に登校して来る生徒群に出会う。彼らも又若者だ。皆、大きな声で挨拶してくれるのが嬉しい。若者は良い!4月30日の開校100周年奉祝祭以降、何か私の周りは全てが上手く行っている感じで私は充実し、心豊かである。要は機嫌が良いのである。 


良い事は続くもので、個人の趣味の範囲であるが、遂に「井戸茶碗のかいらぎ(梅花皮)」が出た。悪戦苦闘した1年と2か月間であった。未だに信じられないが間違いなく茶碗の外部の高台周りに「釉薬が縮んで溶け残った状態のかいらぎ」が出た。井戸茶碗の第一の約束事であるこの“梅花皮(かいらぎ)”を出すのはプロの作家さんでも簡単な話ではない。それがようやく素人の私にも焼けたのである。遂に私の手になる「井戸茶碗らしき」ものが焼けた。井戸は日本の茶人に好まれた茶碗で「一井戸 二楽 三唐津」と言われた程の垂涎の茶碗で国宝の「喜左衛門井戸」は余りにも有名である。私は今から45年くらい前にこの国宝「喜左衛門」を東京の国立博物館で観覧し、見た瞬間から身体が緊張するくらい震えた。要は取り憑かれたのである。 


そして温めていた思いが募り、何とか自分も井戸茶碗らしきものを作り、本校茶道部やゆかりの人々に「私が生きていた証」としてにプレゼントしたいと考えるようになった。2022年4月に心に決め、以来、暇を見つけては千早赤阪村の「多聞茶寮」にて、挑戦してきた。100周年記念事業で気の使う超多忙な毎日であったが「忙しいとき故にこそ集中できる」のであって、まさに「忙中閑あり」を地でいくような毎日だった。しかし粘土を変え、釉薬を変え、窯は電気窯まで用意し、トライしてきたが、駄目だった。実際に釉薬をかけ、窯で火を入れた回数は50回を軽く超えているが、作品は酷い結果であった。しかし文献を読み、人の話を聞き、材料屋さんに教わって来た。勿論一個一個条件は変えてトライした。それでも駄目で「もう諦めるか」と思った最中に出たのである。神様も味な事をなさる。


2023年6月21日は私にとって忘れられない日となった。人間何でも「諦めたら駄目で何時かは花が咲く」ことを今回も思い知った。勿論今回の作品は形状や全体の色調などまだまだ本歌には程遠い代物であるが、自分で点数を付ければ60点そこそこかも知れない。色調が薄く、雅味が不足している。しかし最大のテーマであった「かいらぎの出方」について知見が得られたのは大きく、更に挑戦し「木村井戸」の制作に挑戦する。プライベートでも夢の軌跡となるような「目標がある人生」は面白いし心豊かである。