「斎戒沐浴(さいかいもくよく)して事に臨む」と用いられるが、最近では余り使われなくなった言葉がある。意味は皆さん、良くご存知だ。私は時たま、今日のような緊張する改まった日に使う。遂に「高校入試の当日」となった。8時10分からの朝会の最後に私は並み居る先生方に申し上げた。「府内の私立高校で最も受験生が来る学校となった。続々と受験生が正門をくぐってきている。全ては校長以下諸先生のお力である。誇りを持ちながら、優しいスマイルで受験生を迎え、今日から3日間、頑張ってくださるようお願いします」と。今日の浪速高校入学試験の為に昨夜から私は斎戒沐浴して今日に臨んだ。服装も「ダークスーツ」にしたが朝礼で集まった教職員も全員が見事なダークスーツ姿であった。これもまた受験生に対する礼節的な心の表れで大変結構であったと思う。「形」が決まって中身が伴うものだ。形は大切である。
今日、登校してくる受験生は出願数で言えば2410人である。今日大阪府では全ての私立高校が受験日としている。私は浪速高校の置かれているポジションについて遠い昔を想い、感無量になるのだが、ここまで頑張ってくれた先輩教員や今を本校で生きている教職員に深甚なる慰労と感謝の言葉を捧げたいと思う。又開校101年目の今年の入試がこのような状況にあるのは間違いなく「何かが有って今がある」のであって自然発生的に今があるのではない。又やはり何かがあったのは「謙虚な姿勢」があったからこそ、何かが伴ったのである。我々のこのような姿勢を神様は評価し、応援して下さったのである。「ご神慮」「ご加護」「ご神恩」に感謝申し上げたい。
入試作業ほど緊張感を伴い、分単位の時間軸で動き、くるくると局面が変わる業務はない。今日は中高合わせて非常勤も含めた「総力戦」で戦い、全ての校舎群と教室を使っての作業となる。使う教室数は55にもなる。今日は一言で言えば「多事多端」の日とでも言おうか。「多事多難」ではない。多事多端とは作業の種類が多く
とても忙しいことを言う言葉であるが、そこに緊張感が伴うから私も、校長も教職員も大変だが、受験生にとっては「人生初めて選抜されるという大変」であり、それだけに我々は一つでも「ミスは許されない」。4年前から最も気を遣い、時間を取る採点作業に「デジタル採点方式」を導入したからこの作業は格段に速くなったが、それだけに何か「落とし穴」がないか、注意をしなければならない。新しい方式の導入はドンドンすべきであるが最後は人間の「気」に適うものは無い。
まず受験生の登校状況、点呼、コロナ対策、筆頭開始は8:50分の国語から14:55分の社会の終わりまで、試験監督、回収、本部への持ち帰り、次の問題用紙と答案用紙の持参、又回収と、続く。3コマの試験終了後50分の昼食休憩があり、後半は2科目の試験だから受験生も大変なのである。終われば直ぐに下校はさせない。2400人の受験生が一挙に最寄りの駅に行くと大混在するから「時間差下校」となる。その昔駅長さんから「ホームが混雑し危ないので」と言われ我々は見張り役まで付けて事故やトラブルのないようにしている。学力試験が終わっても教職員は終わりではなく、受験生の無事な下校を確認した後、「採点作業」が始まる。学力試験は受験生がするものであって学校側教職員の仕事は採点作業なのである。私は試験が終わって神社前広場に出てきた「ほっと」した表情の受験生に心の中でお疲れ様と言い、見送った。全てが無事に終わって安堵している。