2022年5月26日木曜日

今日一日を一生懸命に生きる「中今の思想」

 「私立高校の経営は厳しい」のが実情である。全国の私立学校法人の経営者は厳しく苦しい局面にある。本校はお陰様で今のところ不安要素は無く、安定した経営状態が保たれているが「一寸先は闇」で明日の事、来年の事、3年後,10年後の事は分からない。分からないかからこそ「今日一日を真面目に」取り組むのである。神社神道の教えに「中今の思想」と言うのがあるが、これは一言で言えば「今日一日を一生懸命に生きる」と言う事である。この中今という言葉の意味は過去・現在・未来というおよそ存在し得る全ての時間の中で過去と未来の中間に位置する今の世に最高の価値を見出そうとする思想である。これは歴史の永遠の発展を肯定しながらも自己がそれに直接参加しうる現在という時をあらゆる時間の中で最も価値あるものとして受け止め、「今を頑張る」のである。私はこの事を管理職にも教職員にも生徒にも伝えて来た。だから「今の浪速がある」のだと思っている。今日でほぼ決算作業が終わりになる公認会計士の先生方に私はお話した。

2021年の全国4856校の高校の内私立高校は1320校ある。本校もそのうちの一つだ。全国の高校生は約101万人ほどで、高校に入学する15歳人口はこの20年間で138万人から107万人に減少している。私の時代などは団塊の世代として250万人も居たからまさしく「少子化、人口減少」そのものである。ところがこの間、公立高校は賢くて、統廃合を進め、625校も減った。ところが建学の精神ばかりを声高に叫び、一国一城の主たる私立高校は何と「横這い」なのである。自分のところだけはつぶれないと思っているのである。 

少子化の中で公立、私立共に生徒の獲得競争は激しく、各校は共学にしたり、カリキュラムを見直したりして魅力アップに努めているが日本私立学校振興・共済事業団に拠れば入学定員に満たない高校は実に7割に上るという。私立の運営費は生徒からの「授業料」と教育環境の向上を目的に国や都道府県からの生徒数に応じて支給される「私学助成金」などで賄われ、その内「最大の支給額は教職員への人件費」である。最近和歌山の高校で給料が支給さないからと言って教員のストライキが大きく報道されたが、これも経営難で資金繰りに困っての事だろう。学校の先生も「聖職者」ではあるが、毎日の生活がある「労働者」に変わりは無い。給料を支払わない学校法人は失格であり、その法人の理事長は万死に値する。 

又、遂二三日前に大阪府私立中学校・高等学校連合会の総会があったが、その中に大阪の伝統ある某私立高校の学校法人の名前が他の大学法人の名前に替わっていた。これはその高校の元理事長が学校の土地を売却して大きな社会問題となり、結果として法人が吸収合併された例であろう。このように私立高校の経営は「ちょっとした油断」「無能で私物化する理事長」によって一瞬にして「奈落の底に落ちる」のである。肝に命じなければならない。 

従って毎年毎年の「決算」が極めて重要でその計算書類から学校の現実の姿を直視し適切な対応策を取ることが理事長と理事会の責務なのである。評議員はその理事らの仕事ぶりを観察し、適切なる助言や指導を行うことが「私立学校法」の目的とするところである。1月以来何回にも分けてご来校頂き、公認会計士と税理士の先生方の「監査」が今日でほぼ終わり、「令和3年度の計算書類」が今日でほぼ完成する。監査の範囲は全てであり、粉飾が無いか、経理は適切になされているか、固定資産の破却はなどなどが詳細に調べられ、最後は公認会計士の印鑑が押されて作業は終わる。これを30日の理事会・評議員会に提示して議論いただき、認可を受ける。その後、時を置いて監督官庁である大阪府私学課に脚を運び報告説明して全ての作業が終わる。それ位決算と言うのは厳しいものなのである。私は中身のある良い決算をと願い、それを正しいやり方でやって来たからこそ今日の浪速があると思っている。