2024年7月16日火曜日

「人間禅教団名誉総裁 師家 葆光庵 丸川春潭 老師」

 今日は重要なご来客があった。お名前は本名が丸川雄浄さんと言われるが、今や丸川春潭老師と呼ばれる機会が圧倒的に多い。公式には「人間禅教団名誉総裁 師家 葆光庵 丸川春潭 老師」が正式なお名前である。御年84歳になられる。師家(しけ)とは一般の禅僧に対して、師としての学徳を有する禅僧の事で、特に座禅の師を言う。私とは住友金属の上司と部下の関係でご指導やご厚誼を頂いて50年間にもなる。大阪大学の理学部化学科を卒業され東北大学から工学博士の学位をとられた学者のお顔も持たれ、阪大や中国の大学教授も務められた金属工学の分野では良く知られた学者でもある。私は是非一度丸川先生に学校にお越し頂き、教職員に「指導講演」をして頂きたいとお願いし今日ようやく実現した。 



「人間禅」とは、会社員・主婦・学生などが日常の社会生活を送りながら、本格の坐禅(座禅)の修行を通して人間形成をするために設立された団体で、全国に31道場があり、支部・禅会・座禅会がある。丸川先生は前の総裁で現在は名誉総裁の立場で全国を行脚され指導会をされておられる。人間禅は仕事を持ちながら生きている人間への「心の教育」であり、日常生活の中で生きていると、生死の問題をはじめ、いろいろな感情に苦しめられているが、禅では、古来より、その解決策として、「坐禅(座禅)を通して三昧に入る」ことによって、平穏で、自由な心を獲得する修行法がその行動原理である。禅は中国から伝わり、長く僧堂(寺院)の中で出家した僧侶によって護持されてきたが、出家しなくても、市井の人間でも出家者と同じ修行ができる道が人間禅であり、系統的に人間禅は、円覚寺の流れを汲む。

 本日の指導会は老師自らレジメを作って下さり「心の教育・人材育成と三昧」と称したご講演であった。参加者は期末試験も終わり少し余裕が出来たこの時期なので全員参加の研修会の形とした。総勢140名であった。お話の展開と真髄がまとめられた一枚の用紙に全てが込められていた。難しい言葉であるがその関係性に私はこの年になって初めて分かったような気がした。人間禅の世界では「三昧に生きる」ことの少なかった「不肖木村」であったが、遠く離れていても丸川老師は私の事を気にかけて下さり、私はその謦咳に接することで、一人の人間としての矜持を忘れず、「今日の私がある幸せ」に気付いたような気がした。老師とは久方振りの邂逅であり、昼食を共にし、又今夜もお互いに日本酒が好きなので冷の盃を傾けながら語り合いたいと思う。 



「師あり、遠方より来られたり、これほど有難きことは無し」。84歳になられるが足取りはしっかりとされ、頭は従前と変らずシャープである。冒頭、私の執務室で開講100年夢の軌跡をご覧頂き、その後持参された自分のパソコンを使われるので講演会場を下見された。講演会は素晴らしいもので「数息観法」について実践を交えてご教授頂き「三昧の世界」を教えて頂いたがこれが又難しい。又本校の校訓である「浄明正直」の禅的解釈までして下さった。何処を観ても「かくしゃく」とされており、私は又一歩でも近づきたいと思った。私に対して「木村はもっともっと立派な理事長になれる!自分も84になったがまだ成長している事を強く感じている!」と激励して頂いた。しかし「師の影」は遠い。