2024年7月25日木曜日

灯台下暗し、類は友を呼ぶ!

 建設中の新中学校棟の玄関、「西関門」を入って直ぐの左側の壁面は幅が横5m、縦に3mの壁面があり、ここにはこの校舎を象徴する「芸術的な古事記神話」の木彫り彫刻作品を飾ることは当初から決めていた。テーマは「八岐大蛇」である。この神話世界の重要な「悪役スター?」を是非ここに飾りたいと思っていたが、その彫刻を何方に頼むか、思案にくれていた。当初は「この人は良いかも?」と考えていた人物は居たには居たが、結局ご縁がなく、正式にお断りして新たなる彫刻師を探し出さねば成らなかった経緯がある。しかし「類は友を呼ぶ」の例えの如く、今や浪速ファミリー(類)の一員でもある石川県白山市の「浅野太鼓」さんの浅野社長に相談してみると、簡単にこの問題は解消した。昨日の事である。 

過去共に仕事をした仲間を類とすると、この類には気の合った者や似通った    友が自然に寄り集まってくるもので、まさしく「灯台下暗し(とうだいもとくらし)」であった。灯台のすぐ下は暗いところから、身近な事情はかえって当事者には分かりにくいとの例えであるが、私は既にこの方を存じ上げていたが、当初から遠方であり、ご年齢を考え、意中の人ではなかった。しかしまさしく灯台下暗しであった。浅野社長は昨日、日本遺産「木彫刻のまち 井波」から「井波彫刻」の大家である畠山工房の畠山親子先生をお連れしてのご来校になった。初めて学校に来て頂いたことになる。畠山先生は昨年の開校100周年時に購入した「3尺大太鼓の土台脚に上り龍」の彫刻を浅野太鼓さんの請けとして制作して取り付けて頂いた経緯があった。まさしく類は友を呼ぶである。 

建設中の現場をご案内し、次に神社神道の学校としてのアイデンティティの数々、「古事記序文」の書体、ガラス絵の「天孫降臨」、壁画の「天の岩屋戸」等々をご案内し、私の部屋でまず古事記の本を差し出し、概要の説明から入っていたのだが、全くの杞憂であり、私は恥をかいたと思った。具体的な話に入ったが、打ち合わせの時間は極めて短時間で終わった。畠山先生は「八岐大蛇」伝説を詳細にご存知であり、過去兵庫県の高砂市の太鼓台にこの八岐大蛇伝説を製作した経験がお有りであった。「やりたい」との意欲は満々であり、ごちゃごちゃ言わず施主に添った対応をされる。とにかくその時の下絵をご持参して下さっており、これを観た私は言葉を失った。本当に見事な出来で、迫力もあり、美術的にも美しく、主役の八岐大蛇、これを退治したスサノウノ尊、草薙の剣、将来お妃になられるクシナダヒメ等々フルキャストの絵巻物が私の眼前にあった。私はその場でお願いし発注した。 


畠山先生は今年86歳になられると自ら言われ、人生最後の大きな作品に巡り会えて「精魂込めて造る」と力強くのべられ、私に握手を求められた。職人には納期が命で納期のタイミングを逸したらその作品は意味が無いとまで言われ,井波に帰って直ぐに下絵の制作に取り掛かると目はギンギンに輝き始め、とても86歳にはお見えにならなかった。「理事長は新しいものがお好きですね、私もそうです!」是非学校の一画に浪速中学校のホットスポットとして生徒を見守る「八岐大蛇神話」を内外の評判を呼ぶような新しい感覚で作りましょうと言われるのである。これは世間一般の「職人気質(かたぎ)」ではない。私も「学校作りの職人」を目指していたが意を強くした。あくまで生徒の為にこそ存在する私立学校経営の職人だ。昨日畠山先生にお会いして、この道で間違いはないと確信した。