2021年11月2日火曜日

人間としての幅の広さ

 今年も本校から「防衛大学」に合格し進学する生徒が決まった。仮にM君としておこう。ラグビー部で頑張り勉強と両立し、真面目で礼儀正しい生徒だと担任のH先生は言っていた。スポーツで鍛えられた生徒はこのように礼儀が出来ていると教員は誉める。クラブの効果でもあろうか?「僕は勉強して防大に行きパイロットになりたい」と志を立て、猛勉強して目標を果たしたのである。素晴らしい。要は勉強が良く出来るだけの「頭でっかち」だけではなくて「人間の幅」が養われてきているのだと思う。本校は大体年に一人は防大に合格して進学している。私はM君を部屋に呼んで激励した。背が高く脚が長くがっちりしてハンサムでカッコ良かった。こういう生徒を見ると本当に教師冥利に尽きる。 



防衛大学はご承知のように幹部自衛官を育成する国家機関の大学で難関大学校である。簡単には入れない大学である。ここに大阪府の浪速高校から決まったように進学してくれていることを評価してくれたのか、自衛隊の幹部であるO地区隊長が理事長を表敬訪問したいとのご意向だと進路指導部長が言ってきた。恐れ多いことで元来なら私から訪問するのであるが折角のお申し出でもあり学校見学を兼ねてお越しいただくことにした。我が国にとって国防という安全保障は最大の課題であり、益々国際情勢が混沌としている今の時代だからこそ、自衛隊への理解と応援は国民としての責務だと強く認識している私は今年も一人、「出た」と聞いて頬が緩んでいる。

 今日も中学3年生対象で「公開授業」があった。英語科の女性常勤講師でM先生である。京都は右京区嵯峨野のお生まれ、高校まで京都という「生粋の京都人」である。関西大学文学部英文学で学ばれ「新卒」で本校に来てくれた。当初は通勤に2時間をかけていたが思い切って大阪に転居し学校まで20分の所に引っ越した。この辺の「覚悟」が私を喜ばせる。小学校から中学まで剣道をやり2段だそうだ。肝心の英語教育に関して言えば当初のTOEICスコアは750点であったが自ら外部の機関に行って努力し今815点まできている。更に上を目指すと力強く言ってくれた。高校生の頃オーストラリアに英語短期留学しホームステイの経験もある。発音も良かった。面白いのは趣味である。映画好きで年間130本は最低でも観るというから凄い。又「似顔絵」が得意と言う。一度書いて貰いたい。このように男でも女でも「幅がある」のが良い。

 



今日の授業はインドの民族独立運動の最高指導者のマハトマ・ガンジーを扱った教材で主として「関係代名詞」という極めて重要な英語用法を教える内容であった。中学生に対して英語95%、日本語5%くらいのハイブリッドでICTを駆使したリズム感のある大変に起伏に富んだ良い設計の授業であった。使用する機器はクロ-ムブック端末とアプリはクラスルーム、グーグルフォーム、グーグルスライドでデジタル教科書も使っていた。ご性格が明るいし、心に余裕があるから生徒も明るく活発だ。本当に無駄のない見ていて気持ちの良い授業だった。 


「外に目がいかない」「人との比較が出来ない」「自分の置かれている状況が分からない」「自分の世界に閉じこもり」「自分こそが頑張っている」「私がやらなきゃ」「自分を見失う」というスタイルの人は必ず何時か行き詰り「アップアップ」になる。私はこの若い先生に「生徒をもっと信じて」「貴方はお母さんではありません」「何でもかんでも教師がするより生徒にさせなさい」「時に切り捨てる」「優先順位をつける」「要領よく立ち回る」「早く帰る」「投げ出す」等々を話して聞かせた。話しながらこの先生に限り、こういう事は絶対に起こらないだろうなと思った。人間に幅がある。専任教諭になって張り切り過ぎて心身に不調を来たすのでは「プロではないアマチュア」である。今後とも仕事が終われば早く帰り映画館に行きなさいと私は話したのである。