2023年4月18日火曜日

100周年目の宝物「織額 花鳥御鏡錦」

 4月17日、伊勢神宮の大宮司様のご名代としてナンバー2のK少宮司様がご来校され本校100周年のお祝いのお品を我々に下さった。K少宮司様は神宮崇敬会の理事長でもあらせられ、70年以上に亘って伊勢修養学舎でお伊勢さんとは長いご厚誼を頂いてはいると言え、わざわざトップがご持参くださったのには恐懼した。さすが神宮様であり単に品物を届けるというのではなくて「何をどうして、どのような由来、趣旨で、誰が制作」とまで完璧なまでに用意してご説明下さった。本校とのゆかりを随所に織り込んだ作品となっているところが嬉しい。この織額は昨日から「本校の宝物」になった。未来永劫大切にしていきたいと思う。当面は防火保管庫に入れ、設置する場所を考えて行きたい。頂いた文章は以下の通りである。 

浪速学院殿 創立百周年記念品

        織額「花鳥御鏡錦(かちょうみかがみにしき)」について

令和五年三月吉日

伊勢神宮崇敬会

1.品目

織額「花鳥(かちょう)御鏡(みかがみ)(にしき)」  1

2.内容

 この度、貴学院の嘉年を寿ぐ特別な織(おり)(がく)を謹製しました。神宮式年遷宮に際し新宮に奉られる御神宝鏡の印象を映した、美術織物「花鳥御鏡錦」の飾り額です。貴学院の校章・エンブレムでもある神威籠(こも)った宝鏡の意匠は、古来わが国に於いて吉祥を表わす器財文として尊重され、様々な文物を飾ってきました。本品では金砂子を蒔いた趣の地に、威容堂々たる丹青(たんせい)2面の宝鏡を配しています。ここに見る円と八陵を象る鏡(きょう)(えん)と花鳥の遊ぶ鏡(きょう)(はい)は、皇大神宮と豊受大神宮に調進される、遷宮御料の御鏡に因んだ意匠です。

 古典の染織美に精通し、遷宮御準備にも参画する京都西陣の織元が、貴学院の校訓「浄明正直」を念頭に図柄を起こして各種絹糸・金糸の色沢(しきたく)を吟味し、織技ならではの厳かな光彩を追求しました。末永くご賞翫いただければ幸いです。 

3.製作者

 株式会社 龍村美術織物

4.備考

 本品の図案・配色を担ったのは、龍村美術織物制作部に所属される貴学院卒業生の山出谷氏です。同氏は日本染織界の重要な担い手であり、先の平成25年神宮式年遷宮に於ける御装束神宝織物類の調製では、四代龍村平藏氏(現会長)指揮のもとで優れた手腕を発揮されました。

 本件担当に関する所感を寄せていただいたので以下に記載します。 

  この度、浪速学院様に於かれましては創立100周年を迎えられ、誠におめでとう御座います。卒業後、20有余年を経てこのような形で母校の記念すべき節目に関わらせていただけたことにたいへん深いご縁を感じております。

 製作にあたりモチーフとさせていただきました宝鏡は白銅を材とし、立体的に彫り出した陰影のみで文様を表した銀濃淡の世界です。この意匠を如何に織物ならではの華さやかさで表現しようかと思案を重ねました。

 咲き誇る花の中で尾長鳥が吉兆を歌い舞う意匠から、澄みわたる空を背景に広がる天上の世界を思い描き、またかつて学び舎で教わった「浄明正直」の校訓を想起して、“浄く”明るくの言葉のイメージを色彩によっていっそう際立たせようと、染め色や金銀糸の選定に心を尽くしました。

 この作品が様々な方の目に触れ、“織物”に少しでも興味を持っていただくきっかけになれば幸いに存じます。

 浪速学院様の更なるご発展をお祈りし、織額「花鳥御鏡錦」を製作しました。

                       龍村美術織物 制作部 山出谷 士