「銀も」は「くろがねも」と読む。ぎんと読んでは間違いである。これは「山上憶良(おくら)」の歌で「銀も 金(こがね、くがね)も玉も なにせむに まされる宝 子にしかめやも」から来ている。直訳としては「銀も金も宝石も、どうして優れた宝であろうか。いや決してそうではあるまい。それらは子供という宝に及ぼうか、いや到底及ぶものではない、子供こそ宝である」という風に読めば良いと高校時代に学んだ。出典は「万葉集」である。この「人生歌人」と呼ばれた憶良は飛鳥、奈良時代の役人・歌人・詩文家であり、「万葉集」には和歌が73首ほか漢詩文も収録されている。歌風は質実で人間味あふれるものが多く、私の大好きな万葉歌人の一人である。何時もの事だが、入学式でピカピカの中学校1年生と保護者を見ると、この歌を想う自分が居る。
遂、先日まで小学校6年生で「子ども、子ども」した顔と言動が実に可愛い。それが浪速中学校の制服を着て走り回っている姿を見ると私はいとおしくてならない。この子らの為に特別に何かをしたいと思うのだ。その昔、本校に来ると決まった時に府内の有力私学の理事長が私にアドバイスとして次のように言ってくれたことがある。「木村さん、私立中学と言えども義務教育の一環だから、これは私立高校とは根本的に異なります。その視点で私立中学の経営を考えるべき云々」という意味だった。この言葉こそ浪速中学校に対する私の信念に繋がった。実に名言であったと思う。浪速高校と浪速中学は異なるのである。今まで高校に集中して資金を投じてきたがこれからは中学校に焦点を当てる。
先に学校を出た4台のバスに乗り込んだ中学1年生を追っかけて千早赤阪村の中学校付属施設である「多聞イチゴ園、農園、果樹園」に車を急がせた。今日は中学1年生の校外学習施設見学会で生徒達は美原の「高天原スポーツキャンパス」「多聞尚学館」とこのイチゴ園に行く。現地では管理をしてくださっている女性のSさんと男性のHさんが準備を整えて待っていてくれた。148個の大きくて甘い、甘いイチゴを生徒は自ら採って味わう企画である。特にイチゴ栽培の名人のSさんがチームに入ってくれてイチゴの味は各段に上がった。生徒の中にはイチゴはスーパーにあると思っている生徒が居るかどうか知らないが、イチゴやダイコン、玉ねぎ、そしてクリなどは苗から木から成るものだと身を持って体験する特別企画である。入学者が増えたこともあり私は更に1棟ビニールハウスを増強することを決めた。来年からはたっぷりとイチゴが中学1年生を待っている。