2023年5月22日月曜日

開校100周年企画「図書館デジタル展示コーナー」

 開校100周年を記念して、多くの企画を考え実行したが、今一つアラウンドに書くべき「大切な忘れ物」があった。今日はこの事を紹介したいと思う。これも記念すべき100周年記念企画の一つである。それは図書館に「デジタル展示スペース」を設けたことで結構な費用をかけた。推進は総務部と図書館勤務の優秀な司書職員である。本校には、「知る人ぞ知る」、貴重な「和本」が1400冊もあり「隠れた財産」とも言える。明治時代、本校の生みの親であった「皇典講究所」、後の「大阪国学院」が、これは私の想像でしかないが戦時中の戦火を避ける為に旧制浪速中学校に重要な本だけ疎開させた図書だと思う。これが当時の古い段ボール箱に入って数多くが倉庫の片隅に残っていたのを発見した。平成27年頃だったと思うが「ちょっとした騒ぎ」になった。私は「これはひょっとしたら国宝級が出るかも?」と些か興奮したのを今でも覚えている。とにかく骨董とか古いものが大好きだ。新校舎建設時の前のバタバタしていた時だったから、とにかく紛失しないように彼方此方に移動させて大切に保管してきた。 

そして満を持して昨年、東京の文部科学省関連団体の国語研究所の教授に本校に来て貰い、徹底してこれらの図書の中味と価値を調査頂いた。残念ながら国宝級、重文級の図書とは成らなかったが、教授からは「これだけの和本が纏まって残存しているのは珍しく大切に保管され、内外に公開」すればこれらの研究者からすれば垂涎の書物だから社会の為になるとまで言われた。この事が頭に残っていた私は和本1400冊をデジタル化して展示することにしたのである。「歴史ある学校には歴史ある図書が存在する」ことが証明されたことが喜びであった。まさに「神様からの贈り物」と考えた私は大切に保管し、「陽が当たる日」を待ち、令和5年4月、遂に開校100周年を迎えた時にデジタルでの展示を決めたのである。

 

現在展示しているのは「延喜式」である。この延喜式というのは、平安時代中期に醍醐天皇の命を受けて、藤原時平を中心として編纂された三大格式のひとつで、律令の施行細則をまとめた法典である。明治時代以前の日本は天皇を中心とした中央集権国家であり、この時代の法典が延喜式で、神祇官が朝廷の祭祀を司っていた。内容は、現代でいうところの行政マニュアルのようなもので、中央だけでなく諸国がどのような特産物を納めていたのかも書かれており、当時の暮しを垣間見ることもできる。これらが全て残存している。 

中には大阪の難波津で天皇の即位の儀式のひとつ「八十嶋(やそじま)(まつり)」が大嘗祭の翌年に行われていたという記述で、この儀式は、平安~鎌倉時代まで行われており(*住吉大社のHPに記載あり)、大阪から国家の安泰・平和を祈願する歴史があったということは、大阪の神社界のこれからを考える上でとても大切なことであっただろうと感じた。巻910は「延喜式神名帳」とも言われ、当時国から幣帛(へいはく)(神へお供えをされる物の一種)を受けていた神社の名前が記載されている。「式内社」と言われているが、式内社と言うのは極めて格式の高い神社なのである。

 もうひとつ展示しているのが、本居宣長の『古事記伝』である。『古事記伝』は本居宣長が生涯をかけて書いた古事記の注釈書で、「古事記」は上・中・下の3巻であるが、宣長は、すべてに訓を付け、44巻にわたり註釈をつけていったものである。私が驚くのはこの宣長の「学びの凄さ」であり、今日我々が古事記を深く知る事が出来るのは一重に本居宣長の古事記伝のお陰である。ぜひ本物をご覧したいと思われるお方はお電話をご一報いただければご案内致したいと思う。 



展示スペースでは、本校の歴史や和本の解説動画なども視聴できるようにしており、将来は「デジタル複合図書館」も視野に入れている。今日は担当にこの事も話し、夢を膨らませるように言った。何時までも分厚い書物の整理棚のイメージだけの図書館では今日的ではない。新しい感覚の図書館を目指すように言ったのである。開校100周年記念「祈願の碑」と言い、この和本の展示コーナーと言い、結構我々は良い仕事をしていると思う。単に式典に費用を使っただけではないのだ。