2023年5月27日土曜日

「大阪府高校授業料無償化問題」

 開校100周年記念事業を無事に終えて私は毎日、「幸せな時」を過ごしている。本当に安堵している。全てが上手く行ったと思う。着任時に自ら立てた「学校の改革を成功させ、自分の手で100周年を寿ぐ」という目標を達成した、このゆったりとした心の中の「充足感と幸福感」は何事にも代えがたい。しかし世の中は甘くはない。何時までもゆったりという訳に行かなくなってきた。時は進んでいるのである。開校100周年が終われば「次は授業料を上げさせて頂く」と言う次の大きな目標に暗雲が立ち込めて来た感じだ。元々、本校の授業料は高校も中学も高くは無い。大体府内の私立学校の中でほぼ中間に位置している。これは私が「限界まで保護者にはご負担を掛けたくない」と意図してやったことである。しかし後述するが、現在「大阪府では高校の授業料が大きな問題」になってきており、以下高校に限って論述するが、本校では入学金は20万円、授業料が639400円であり、過去入学金は全く上げず据え置きでやってきた。授業料に関して言えば平成29年以来値上げしていない。 

この間、自己資金と外部資金で頑張ってきて今年全ての外部融資を繰上償還して今や「無借金」の財務状態である。その代わり手許資金も余裕が全く無い状態となった。直ぐに「新中学校校舎」を建てねばならない。100周年を過ぎ、待ちに待ったこのタイミングで私は授業料の値上げを考えて来たのだが今後「一波乱」起きそうな気配で対応を間違えないようにしたいと思う。勿論、保護者負担を考えれば「はい、来年度から上げます」と簡単には行かないし、又これは監督官庁である大阪府の許認可事項でもあるからだが、根底にあるのは「教育事業は営利目的ではない」という大原則があるからである。従って一般の民間企業みたいに余裕の利益を「内部留保」として蓄えることは原則に外れる。しかし私立学校は公立学校に比べて大きな課題は「新校舎建設や教育環境の整備充実」は自己努力でやらねばならないことだ。これが「実に大変」であり、この資金は数年をかけてちびちびと積み立てるか融資を受けて毎年毎年支払っていくかの選択しかない。この原資は大阪府からの「経常費補助金と保護者からの授業料収入」で賄っている。公立学校みたいに条例で全額公費負担の新校舎が持てるなどは私立学校には有り得ないからである。 


授業料の値上げで「高校で少しややこしい問題」とは、先の地方選挙で当選した大阪維新の会の吉村知事が公約として打ち出した目玉政策である「大阪府高校授業料完全無償化」である。大阪府は来年度からやると言って現在私学側と議論を進めている。26日には朝日が報じていた。我々私学サイドは勿論授業料完全無償化は歓迎することであるが府は大きな条件を我々に突き付けている。それは授業料の上限(キャップ制)を維持したままだと言い張っているのである。そうなればキャップを超えた部分は学校法人の負担だと行政は譲らず、これは私学サイドとしては譲れない一線である。間違いなく経営問題に発展する私学は出て来るだろうし、経費削減の為に教職員の人件費や教育環境の劣化に繋がるからである。「私学の独立性」を言うなら授業料などは私学責任に任せるべきである。キャップ制を超えて授業料を取得しても生徒保護者に納得して貰えない教育の中味と環境では早晩その学校は行き詰るだろう。公立と私立、私立の中でも色々とあって良い。「多様性のある学校」こそが今後の日本には必要であり、一律に授業料無償化を謳って私学の経営を縛るべきではない。私は本日10時に「私学保護者連合会の副会長」を務めて頂いているS保護者とPTA会長を学校にお呼びし、これらの問題に関して情報を共有し呼吸を合わせる時を持った。S副会長さんは頭脳明晰で、中々良い議論が出来た。私は「適正な財務状態を維持」して本校教育を進化発展させながら、生徒と保護者の期待に応え、そして教職員の生活を守らねばならない。